ホーム > 小説ギャラリー > Artificial Crisis > 0. “ABYSS HANDS”
目覚めたときに見るものは、いつもと何一つ変わらない、殺風景ともいえる見慣れた部屋。
軽い頭痛がしていた。すぐに忘れてしまうような、ごく軽い。寝覚めには、ありがちなことだ。
やや硬めなベッドの上で身を捩り、顔を横へと向ける。無機質な時計のディジタル表示板は、“7:46”という文字を映し出していた。
――
今日はあそこへ行かなければならない日だ。
彼女は小さくため息をつくと、身を起こし床に降り立つ。
服を着替える必要はなかった。すぐに外へでも出られる格好だ。そうするのは現在(いま)の仕事を始めたときからの習慣づけていた。
いうまでも無く、寝ているときに何かあった場合、素早く動き出せるようにするためだ。
鏡の前に立った彼女は黒髪を簡単に梳かし、手に取ったヘア・スプレーを使い、いつもと同じ髪型に髪を整える。
鏡に映る自分の顔は、このところしっかりした睡眠がとれていないせいか、いつもよりも疲れて見えた。
――
それとも、今日のことに憂慮があるからだろうか。
ベッドに腰かけ、俯く。
――
また、繰り返すのだろうか、同じことを。罪悪感が、ないわけではない。そもそも何故、こんなことを・・・・・・?
――
もう、わからない。それが始まった日のことも、もう、思い出せない・・・・・・
それとも、思い出したくないの・・・・・・?
自問ばかりが浮かび上がる。
それを振り払うかのように頭を軽く振り、立ち上がって部屋のドアへと向かう。ドアの前で一瞬立ち止まるが、そのままドアを押し開け、外に出る。
――
イレギュラー・・・・・・その存在を受け入れることは、できないのだろうか――
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