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アーマード・コアファン

ホーム  > 小説ギャラリー > Artificial Crisis  > 3. #.1 “BURNING VESSEL”

「 ―― いくらなんでもよ・・・・・・さながら凄まじい突貫工事だぜ、これは」

「まぁ、そうだろうが・・・・・・頑張ってくれ。こっちも依頼が入っているんだ。何とか、二日で仕上げてくれ」

「へいへい」

半ば愚痴のような言葉を漏らすアドヴァントとアオイが話しているのは、ガレージの中。壁面に固定された派手なカラーの機 ―― “天風”に、多くの男達が取り付き、各自作業を行っている。蜘蛛の子のように取り付いている彼らは、恐らくアドヴァントの仲間か何かであろう。機体の損傷具合を見た彼が、それが予想以上に酷いものだったためか、何処かから呼び集めてきた“援軍”だった。だが彼らが加わったとしても二日で全てを終えるのは、結構な重労働になると思われた。彼が“突貫工事”と言うのも無理はないだろう。

暫し作業の様子を眺めていたアオイだったが、突然何かを思い出した風に、再度アドヴァントの元に歩み寄り一言二言話しかける。その内容に、彼は怪訝そうな表情を見せつつ聞き返す。

「武器の、開発?」

「あぁ。全部とは言わんし、今すぐ作れとも言わない。腕部装備だけでいい。とりあえず検討して、然るべき後に製作に入ってくれないか」

「何か ―― 不満点でもあるのか?」

アドヴァントの口調からは、問題点は無い筈、との自負が垣間見えた。それを受けつつ、アオイもまた返す。

「いや・・・・・・確かに問題はない。だが ―― 如何せん、耐久年数の方が問題だ。ちゃんと整備やっているとはいえ、あれらを使ってもうかれこれ三年ぐらいになる ―― だいぶ酷使もしているしな・・・・・・」

「あぁ・・・・・・そういうことか。わかった、考えておく。今更聞くまでもないが、金はちゃんと払ってくれるのだろうな?」

それまでアオイが対価を支払わなかったことは、一度たりともなかったが、一応、といった感じで問う。

「もちろん払ってやるさ。いつものようにな。俺がそれに満足すれば ―― 言い値で払ってやる」

そう言いつつも、アオイは常に言い値で金を払っていた。それを知っているからアドヴァントの方も法外な値段を言うことはなかったし、今日の返事もすぐに出た。

「了解。にしてもお前の投資対象は、ACと酒以外にはないのか?」

「まぁな・・・・・・じゃぁ俺は向こうに行っている。何か問題があるようなら言ってくれ」

揶揄が十二分に含まれた言葉だったが、いつものように軽く流され、またこれもいつものように彼に妙な面持ちをさせることとなった。

そして、アオイがガレージの外に出ていったのを横目で確認すると、独り呟く。

「まったく、人使いの荒い野郎だぜ・・・・・・」

これがいつも繰り返されていることなのか、作業する男達の表情は一連の様子を見る間中、終始必死で笑いを堪えているかのようであった。


「さてと・・・・・・適当に調べとくかね・・・・・・」

“家”の部屋に戻ったアオイは、未だジャングルの如き様相を呈しているコンピュータのディスプレイの前に座る。

「それにしても ―― あいつも次から次へと仕事を持ってくるな・・・・・・」

“ベッド”に戻って半日ほどした頃、依頼のメールは送られてきた。内容は「レクテナ施設の破壊」。どうもこのところ破壊とか、襲撃とかが多いよな、と内心で思う。
レクテナというのは、太陽発電衛星から送られてくるマイクロウェーブを電気エネルギーに変換するためのものだ。当然のことながら地上に設置され、地下都市への電力供給を行っているのだが ―― 何故わざわざそれを破壊しなくてはならないのか。

一抹の疑問とともに依頼文を読み進めると ―― 至って簡単な理由だった。ターゲットのレクテナ施設は、既にウェンズデイ機関の手に墜ちているとのこと。そもそもその施設は、元々それほど重要な施設への電力供給は行っていなかったらしい ―― だから、この際破壊してしまっても構わない、ということか。
レクテナ施設一個を丸ごと占拠するほどに、彼らも莫大な電力を要しているのだろうか。やはり、あの“実験”のためか。

憶測が尽きることはなかったが、とりあえずそれは思考の片隅に押しやり、施設に関しての情報を集める。

―― 結局、ごくごく普通の情報しか手に入らなかった。まぁそれだけでも十分ではあったが。施設には地上部分と地下部分とがあり、行き来にはエレベーターを利用。それと、常識的なことではあるが、レクテナの上に不用意に出るのは自殺行為だということ。そこにのこのこ出ていけば、当然マイクロウェーブの洗礼をもろに受けることとなる。その場合、機体が程よくボイルされることは確実である。中にいる人物も、無事では済まないだろう。集められた情報は、そんなところだった。
情報の収集を止めようとしたアオイの目に、一つの記事が留まる。

「地盤沈下の危険性・・・・・・?何だそりゃ・・・・・・」

何やらここ最近、その施設付近の地盤が急速に緩んできているらしい。あまり上で大騒ぎすると、地面が割れるかもしれない ―― というようなことだった。

「なんだか申し合わせたように、って感じだな・・・・・・まぁいいか。それなりに気をつけておけば問題ないだろう・・・・・・」

ジャングルの前から離れると、棚から湯呑みを取り出し、また別の棚から茶葉を出す。それを急須に放り込み、さらに近くのポットにあった湯を加える。暫し待ち、急須から茶を注ぐアオイの姿は、妙に滑稽に見えた。手がごついせいか、小振りな急須がまるで玩具のように見えてしまうのもその要因の一つだろうか。

ともあれ、茶を注ぎ終わり窓際の椅子へとその身を預ける。湯呑みに口をつけつつ、呟く。

「あと二日、か ―― 」

特に不安に思うことは何もなかったが、だがしかし ―― レクテナ施設の破壊、それだけで、二日後が平穏無事に終わるとは、何故か思えなかった ――

そしてその予想が、奇しくも的中することになろうとは。



「あれか・・・・・・」

数キロ先、センサーは巨大な熱源を示していた。そしてその周囲に点在する、無数の小反応。施設の防衛部隊と見て、間違いないだろう。代わり栄えのしない荒野を滑りつつ、最適な突入ポイントを探す。この施設もまた、あの“アンバー・クラウン”地上施設と同じく、お椀のように掘り下げられた土地の底部に作られていた。
因みに、“突貫工事”の甲斐あって、機体はほぼ完全な状態にまで修復され終わっていた。アオイがガレージを出るときにその工事人達の方は、既に「死にかけて」いたが、あまり気にしてはいけない。

「地下施設から一気に破壊するのが楽か・・・・・・」

地下には多量のジェネレーターが存在している。当然その爆発に巻き込まれるのは危険だし、それを護る部隊も相応の布陣がされていることだろう。だが、そこを潰してしまえば施設はほぼ壊滅したも同然といえた。

地下へ降るためのエレベーターの所在を割り出し、ポイントを定めようとする。だが運の悪いことに、エレベーターの入り口の向きは、丁度反対方向にあった。上方を迂回して向こうに行くわけにもいかない。その間に発見されれば手痛い打撃を受けるだろうし、突入自体困難になるだろう。

「ある程度相手にしつつ、入り口を目指すしかないか・・・・・・」

面倒ではあったが、強行突破しようとして不必要なダメージを蓄積するよりはましだろう。
そう決め込むと、上方向に岩盤が突き出た部分を目標に進んでいく。あそこからなら、寸前まで敵軍に発見されることもない筈だ。やがて、独特の気配を発する施設の全貌が、はっきりと見えてきた。崖上にはアンテナと思しき物体が数機、施設を囲むように設置されていたが ―― この際、取り立てて気にするほどの物ではないだろう。

施設を飛び回る“スーパーシミター”、そして地を闊歩するのは“オーガー”。どちらも、まだこちらには気付いていないようだ。索敵性能が劣っているのか、それとも警戒度が低いのか ―― “オーガー”の方は別としても、センシングユニットをわざわざ追加装備している“スーパーシミター”に前者のようなことは考えられない。とすると、やはり警戒心の欠如か。あるいは気付いていない“ふり”をしているのか。どちらにせよ、こちらはもう突堤まで到達している。後はここを降りるのみ。

前触れ無くそこを飛び立ち、椀の底に着地する。砂埃の舞う中、青く光るスリットアイがレクテナを、そして周囲の敵を見据える。すぐに敵もそれに反応し、こちらへと注意を掻き集める。どうもこの連中、敵を発見するまでは対応が非常に怠惰であるが、いざ捕捉となると、異様に行動が機敏になるように思われた。

「行動にけじめがあるのはいいことだが ―― もっと早く対応した方が身の為だぞ・・・・・・」

言葉と共に弾丸を手近な“オーガー”に送り込む。いきなり頭部を潰されたそいつは、ふらふらと歩いたかと思うと施設の柱に激突し、呆気なく倒れこんだ。頭部をやられた程度であんな動きをされては ―― どうにも調子が狂う。

開戦早々鬱な気分になりながらも空から落ちてくるチェインガンの弾丸を器用にかわし、施設方口に移動し、レクテナ付近に敵を誘う。案の定、レクテナ上方に向けて滑空してくる“スーパーシミター”。そこを二発狙い撃ち、突き出たような巡航ユニットを吹き飛ばす。吹き飛ばされたユニットの残骸 ―― といってもまだ綺麗に原型を留めているが ―― は、運の悪い者も居るものである。後方から機銃を撃ち放ちつつ同じく降下してきていた一機に正面から衝突し、何処かが破損したのか意図しない急降下を開始した。

そしてユニットをもろに飛ばされた一機はというと ―― 脚を擦るようにして不時着を試み、見事着地に成功したまではよかった。が、如何せん着地ポイントが悪すぎた。そこは、レクテナの上であった。即時それと気付いたのか、再び離陸をしようともがくも、上手くいかない。そうこうする間に機体から白煙が上がったかと思うと、そこから必死で逃れようとレクテナ上を転がった。しかし巨大なレクテナの支配領域から脱することができるわけもなく、遂に機体構造が限界に達しようとしたとき ―― さらなる不幸が後方から「突っ込んで」きた。それは先程制御を失ったもう一機であった。

哀れな二機は激突の衝撃で一回バウンドしたかと思うと ―― レクテナ上空にて同時に爆発、その名残が四散し、周囲に金属の雨を降らせた。

なかなか面白い見世物だったな、と思いつつも既に地上の数機を葬る。機体が地を滑った後には、無残な姿を呈した“オーガー”が、虚ろな目をただただ中空に向けるだけだった。

レクテナの下部は柱が多数、入り組むように設置されているが、AC一機程度なら通り抜けることが十分可能だ。そこを突破し、一気にエレベーターの入り口側に回ろうとするが ―― そこで足を止める。そして、柱と天井によって為された闇を睨む。

「何か、居るようだな・・・・・・MTか・・・・・・?」

確かに、闇の中蠢く影が見られた。妙に背丈が低く、這いずるように動き回っている。警戒しつつ、柱に身を寄せるようにして接近する。そしてそれを間近で直視する。それは ―― 何と表現するのが適当か。言うならば蜘蛛、だろうか。だがそれには四本しか脚がなく、平坦なボディから恐らくは砲身であろう物が飛び出している。自動兵器、“ナースホルン”であった。

「こいつか・・・・・!」

アオイはそこから一瞬で機体を離すとライフルを二連続で撃ち込む。扁平な装甲に穴が開き、一瞬後に火球となって飛び散った。目の前に飛んできた砲身を左腕で避けると、奥の様子を見やる。中には、少なくとも十数機の“ナースホルン”が居るようだった。

「暗いところが好きなようだな・・・・・・なら、炙り出してやるまでだ」

言うと徐にグレネードを構え、施設下部へと叩き込む。すぐに起こる激しい、地を揺るがすような爆発音。内部で火球が膨張し、熱せられた空気が出口を求めて施設周辺部へと集まり、吹き出す。お供に砕けた黄白色の破片を引き連れて。その時、あの“地盤沈下の危険性”という情報が今更ながら思い出されたが、気にしてももう仕方がない、気にせずまだ熱風と硝煙の残滓が残る施設下部へと突入していく。

まだやはり残余熱はおさまり切っていなかったが、問題になるレベルではない。中を駆け抜けつつ、残党勢力を探す。ここにいる限り、上方から攻撃を受ける可能性はまずない。それこそレクテナごと風穴を開けるような兵器でない限りは。それに、もしそんな代物を使えば、自ら施設を壊滅させることになる。

道中見え辛い柱の影に小型の砲台が姑息に設置されていたが ―― 向こうも方向が悪かったようで、こちらに砲を旋回させている間に叩き斬られた。斬り落とされ、地面を跳ねる砲身の音を背後に聞きつつ、前進を続ける。そして柱の間を回りこむこと数回、遂に“出口”、そしてエレベーター施設が視界に入った。が、またもそこで足止めを食う。斜めに撃ち下ろされてきた一本の紫電によって。

「うおっ・・・・・・?!」

叫びと共に反射的に機体を後退させる。地面で跳ねた紫電は爆発し、視界を一瞬薄紫に染めた。周囲を舞う微弱な電磁に、一瞬レーダーがざらつく。
爆発がおさまるとすぐさま飛び出し、それの姿を探す。その対象 ―― “スーパーシミター”の姿は眼前の崖上にあった。降着状態をとり、またもプラズマキャノンの狙いをこちらに定めている。

伸びる電光を確認するかしないかの内に、横手へと逃れる。が、それが結果的にある意味で惨事を引き起こすこととなった。
発射の寸前に、捉えていたターゲットの位置をずらされたプラズマキャノンの紫電は大きく外れ、あろうことか白い箱物体、エレベーター施設に突き刺さった。電荷が炸裂し、おそらく脆弱なつくりであったのであろうそれは、その一発で天蓋を打ち抜かれ、内部で爆発を起こし側板がそれに伴って粉砕された。

「くそ・・・・・・よりによってあれを・・・・・・」

怒りのままにライフルを構え、連射する。五発の弾丸は空を裂き、未だ降着状態にあった“スーパーシミター”を解体処分した。それを見届けると無残に破壊された施設へと急ぐ。

「何とか・・・・・・行けそうか?」

爆発の威力は内部で待機していたエレベーターを基部ごと持っていったようで、そこには暗い穴が一つあるのみだった。どうしたものかと思案していると、不意に足下で銃弾が跳ねる。爆音を聞きつけたか、反対側にいたと思しき部隊がこちらに集結し始め、火砲をこちらに向けている。

「いつまでもしつこい連中だな・・・・・・」

苛立ち混じりに言うと、穴へと機体を投じた。それほど深くはない。数秒の後ブースタを噴射しつつ地に脚を付けると、穴の上方に向けてライフルを二発撃った。金属同士が上でぶつかる音が聞こえたが、気にせず落下したエレベーターの残骸を蹴りつつ機を前進させる。そこに、中央部を撃ち抜かれた“ナースホルン”が落下してきた。上下逆様になったそれは暫く四本足を蠢かせていたが、やがて火花を散らすと停止した。

「しつこさだけは、一級品だな・・・・・・」

実際“ナースホルン”はそこまで高価高性能な機体ではない。それを踏まえた上でのその言葉だった。

数メートルの細い通路を抜けると、途端広間に出る。照明は、無い。日の光を利用することもできないので、組み込まれた暗視デバイスを起動、視界が緑に染まる。
そこにあるのは、ジェネレーターの群れ、そしてその間を歩く数機の“陽炎”だった。どうすべきか ―― 逃走のことを考えれば、まず“陽炎”を料理した後にジェネレーター数機に唾を付け、脱出するのが妥当だろう。数機破壊してやれば後は、連鎖的に全てを叩くことができる筈だ。

緑のやや重い視界の中、飛び回る“陽炎”を捉え一息に接敵する。そして有無を言わさずライフルを横に倒しつつ相手の背後に差し込み、その体を固定する。間髪入れずにブレードを横に薙ぎ、胴を断ち斬るとやっと右手を離す。もし泣き別れとなった体がジェネレーターにでも突っ込めば、どうなるかは大方の予想がつくだろう。

「おいおい・・・・・・危ないぞ、乱射しやがって・・・・・・」

残った二機の“陽炎”は携行ランチャーからロケット弾を乱射しつつ接近してくる。一発ぐらい当たった程度で暴走するほどジェネレーターもヤワではないとは思うが、意識的にジェネレーターを自分と相手の射線上に入れないようにしつつ、比較的開けた端のスペースを目指す。そのため砲弾が数発機体に命中したが、背に腹は変えられない。ジェネレーターもろとも吹き飛ぶと思えば、耐えるに値することであろう。

開けた場所に来るや否や、機体を横方向に滑らせ、勢いのついていた敵機を空間の奥へと誘い込む。必死でブレーキをかけるも間に合わず、眼前を通り過ぎ壁近くで漸く止まる。そして振り返った二機を待ち受けていたのは、無数の高速弾の群れだった。

素早く弾倉を交換し、袋の鼠となった敵へと猛射を浴びせる。幾筋もの火線が緑の視界を埋め、飛び散る火花、装甲がマズルフラッシュに浮かび上がった。
弾倉二個分の銃弾を全身に喰らった二機は、既にピクリとも動かなかった。弾倉が落ち、地面に跳ねる軽い音だけが地下空間に響く。

「さてと・・・・・・とっとと終わらせるか・・・・・・」

先に通ってきた通路付近まで戻ると、なるべく遠方のジェネレーターに向けて銃弾を放った。的確にそれが命中し、機器が火花を散らす。止めと言わんばかりにもう一発撃ち込むと、踵を返し、通路を駆け戻っていく。

すぐさま爆発はやってきた。最後の一発に中枢部を破壊されたジェネレーターはその持てるパワーを一気に解放し、地下空間を爆発の波紋が嘗め尽くす。続けて爆心に近かった数機が立て続けに後を追い、図らずともアオイの思惑通りの結果を引き起こした。

一方でアオイは、既に背後まで迫った爆発の余波から逃れ、地上へと再び飛び出していた。暗視モードを解除し、視界に色彩が戻る。といっても、映ったのは白茶けた崖の壁面だったが。周囲で待機していた敵陣は、この突然の出現に僅かに驚きつつも、中空に逃れた“天風”を追撃する。だが、それを気にした様子も無く、一気に崖上へと上り詰めた。そして旋回すると、下方へと目をやる。既に“スーパーシミター”は全滅したようで、ここまで上ってくることのできるものはいなかった。

「揺れているな・・・・・・流石に」

その言葉通り、地面の揺れは自分が立つ崖上にまで伝わってきていた。底部に立つ敵機も、その身を揺らしている。あの穴からは、引っ切り無しに爆炎が立ち上っていた。

ここでアオイは、一つのことを期待していた。あの、“地盤沈下”だ。これだけ派手に地面を揺さぶれば、起こる可能性は高い筈 ―― そういった期待だった。そしてそれは、現実になろうとしていた。

底部各所の地面に亀裂が入り、そこからも爆発の余波と思しき煙が吹き出す。どうも、破壊の連鎖はジェネレーターだけに留まらず、施設全体に及び始めているようだった。アオイにとっては、嬉しい誤算といったところか。

やがて危機を感じ始めたのか、下方の敵の動きがあわただしくなる。なるべく崖上と底との距離が狭い地点へと移動し、底部から脱しようと試みるが ―― それを見ていたアオイは、呆れの混じった口調で、冷たく呟いた。その内容は、既に周知のことであったが。

「行動が、遅い」

その一言とほぼ同時に、大量の土砂が機体のところまで吹き上がった。地面が遂に、陥没したのだ。逃げようともがいていた機体群もその土砂と振動に壁面から引き剥がされ、アリジゴクの巣の如くなった、さらなる底部へと飲まれていく。巨大なレクテナも二つに折れ、さらなる火災が発生した。先程までにも倍する振動が、周囲を覆う。

皆まで見届ける必要は無いと判断したのか、アオイは無言で踵を返し、いつものように青い燐光を後に残し、飛び去っていった。

さらに陥没した底部では、土砂に混じった施設の残骸が、火の手を上げている。


椀の底、朽ちた機体と構造体とを巻き込みながら、業火が全てを焼き焦がしていく ―― その邪悪とも言える炎は、何を意味し、語るのか ――

 

 

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