ホーム > 小説ギャラリー > Artificial Crisis > “TEARS SHADOW and LOST THINGS”
殺風景な部屋の机に置かれた一枚の紙 ――
時代と不釣合いな“手紙”だった。
宛名も何もなく、ただ誰かの言葉が書き連ねてあるのみ。
開け放たれたままの窓から吹き込むかすかな風が、固着された言葉を詠んでいく。
―――
私は“世界”に絶望していた ――
そのことは、前にも話したと思う。けれども一方で、もうあれを繰り返させたくない、そんな心があった。そしてその自己矛盾の狭間で私は“彼ら”を絶やし続けていたわ。
もう、何も考えられなかった。いえ、考えたくなかったのよ・・・きっと。結果や過程を全く視野に入れず、ただただ原点の矛盾した心
―― 一つの目的に妄信的になっていた。
そして私は私自身も知らず知らずのうちに喪失していった ――
“彼ら”だけでなく。
そんな内面の深部を醜く崩壊させた私は、あなたと出会った。当然、“目的”のために。
いつもと同じことが繰り返され、私もさらに損なわれるものと思ったわ。
けれど
―― 決定的な違いが生じてしまった。そしてそれが、二重の意味で矛盾・葛藤の淵に私を立たせることとなった ――
――
私があなたに慕情を抱いてしまったことが。
私は毎夜悩んだわ。天上に浮かぶ月が、あんなに無情に見えた宵はなかった。月のさやかな光の下で、落ちるのは苦の雫。涙の影は、まるで私の全てを見通し、映して出しているよう。それが余計に辛かった
――
そんな私をあなたは受け入れてくれた。けれど ――
ごめんなさい。本当はそれが嬉しかった筈なのに。それなのに私はそれを投げ捨て
――
真の私も、偽りの私もなかった。中途半端な立ち位置で、それを眺めていた私にはもう、抗うことができなかった。
それでも私はそれを最後まで貫き通す心積もりだった。
矛盾の中で生きるのならば 矛盾の中で終わるべき
――
私にはもう そうするしかなかった
―――
窓から突然に強風が吹き込み、わずかに湿ったその紙を、見えない力で宙に浮かべる。
そして次の瞬間戻る風に流されて、黄昏の空を舞い、消えていった
――
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