ARMORED CORE FAN

アーマード・コアファン

ARMORED CORE REVOLUTION MEMORIES > REVOLUTION:1 teh New fang

そう、彼はもう逃げなかった・・・

彼の、悲しい過去を断ち切る為に。


―――


霧が立ち込めて、まだ日の昇らない早朝・・・
地上の工場街跡に男が車で入っていった。

そして男はある一つの工場の前に止まると車から降りた。
「・・・ここか」

男は工場の分厚い扉を開ける。

「待っていたわ」
薄暗い工場の中に木霊する女の声・・・声の質からして20代前半だろうか。
声を聞き、男は反射的に懐に手を入れる。

「なるほど、こうなる事は既に予測済みって事か・・・スミカ・ユーティライネン・・・」
男がそう言うと工場の一角から一人の女性が出てきた。
「あら、ここへの来訪者はここ一帯に仕掛けた監視モニターでいつでも判るわよ」
女はそう言いながら男に近づいて行った。

「さてさて、こんな所で立ち話も何だから、奥でお茶にしない?」
女は笑いながらそう言った。


―――


「それで、私の書いたメモは見てくれたかな?レイフォード君?」
女―スミカは少しふざけた態度で男―レイフォードの顔を見た。
「“ここに来れば新しい力をやってもいい。ただしそれ相応の覚悟があるなら・・・”アンタのメモにはそう書かれていたな」
レイフォードはそのメモをポケットから取り出し、スミカに見せた。
「えぇ、それでその力がこれよ」

スミカはそう言うと手元にあったスイッチを押した。
天井に備え付けられたライトが一斉に光をともす。
そして暗闇から現れたのは一体の巨人・・・。

「これは・・・AC・・・いや・・・こんなパーツ見たことないぞ!」
レイフォードはその巨人を見て驚きを隠せないようだった。
何故なら、その巨人はアーマード・コア・・・ACと呼称される“兵器”・・・しかしその巨人はACとは少し違っていた。

「これはネストが極秘に開発した特殊AC・・・通称『プロトセラフ』と呼ばれているモノよ」
スミカが巨人の説明をする。
「でも、この機体は高起動型の弱点である防御力の薄さを全身のアーマーでカバーしようとしてその機動力を殺いでしまった欠陥機・・・」
どうやらスミカがメモに書いていた「それ相応の覚悟」とはこの欠陥の事らしい。
「そして、その殺がれた機動力を追加ブースターで補おうとして更に重量が嵩んだ一品よ」

筋金入りのじゃじゃ馬・・・レイフォードは語らずともそう思っているに違いない。
「それで、これを俺に預けるっていうのか?」
レイフォードの一言をスミカは否定する。
「いいえ、条件があるわ」
「条件・・・?」


―――


工場街の内部に幾つかの影・・・
ビルや工場、倉庫などに潜むそれは明らかに紛れ込んできた動物などでは無かった。

ヴェノム


クローム社製の汎用AC・・・その数10。
恐らくウェンズデイ機関が差し向けた部隊だろう。
「目標の位置データ確認・・・あの工場でいい筈だ」
レーザー通信で目標のデータをやり取りしながら時間を待つ。

「しかし、数時間前にあそこに入っていた車・・・あれは一体・・・」
隊員の一人がふと口を開く。
「気にするな、恐らく目標の協力者だろう・・・一緒に排除すれば問題無い・・・」
その隣のヴェノムはそう言うと再び監視に付いた。

「時間だ、攻撃開始・・・」
そう言うとヴェノム部隊は一斉に建物に向かって攻撃し始めた。

炎が工場全体を包み込む。

「任務完了・・・これより・・・ぐわッ!!」
突然火の海から閃光が走る。
閃光に貫かれたヴェノムは爆散する。
そしてその閃光の先には一体の巨人・・・。
「な・・・何?!」
隊員達は驚きを隠せない。
なぜなら、与えられたデータには「敵は有明一機のみ」としか書かれていなかったからだ。
データに無い敵の登場・・・これはまさしくアンノウンと呼ぶに相応しい。


―――


「スミカ、無事か?」
レイフォードはスミカのAC・・・コーラルスター(有明)の無事を確認する。
「無事よ、レイフォード」
レイフォードの機体のほぼ背後・・・直撃コースからは完全に外れていた。
「それで、どう、じゃじゃ馬のお味は?」
レイフォードの横に立ち、スミカは言う。
「悪くない・・・俺向きの機体だ」
そう言うとレイフォードは機体を走らせた。
「ぐ・・・バランスが取り辛い・・・アーマーのブースターは姿勢制御程度にしか使えんか・・・!」
そしてレイフォードは目前のヴェノムに向かって左腕に装備されたブレードで攻撃した。

青く・・・そして長い刀身・・・見た目は違えど中身は月光そのものだった。
「ふ・・・こいつは使い慣れてるからな・・・丁度いい!」
更に右腕に装備された長い砲身を持つランチャーで遠くのヴェノムも狙撃する。
閃光が走り、その光がヴェノムを貫くと同時に爆散。
先程工場から走った閃光はこれだった。

『くそ!!撃て、撃てぇ!!』
ヴェノム隊は我に返って一斉射撃を行うが、動揺を隠せない。
マシンガン、バズーカ、レーザーライフル・・・色々な弾が飛ぶが、レイフォードの機体には一発も当たらなかった。

「・・・各部のブースターで姿勢制御すれば・・・これ位は!」
レイフォードは機体各所に搭載されている追加ブースターを巧みに利用し、紙一重で攻撃を避ける。
『馬鹿な・・・当たらないだとぉ?!』

「・・・多少引っ張られる感があるが・・・コイツは慣れか・・・」
そして敵に接近して至近距離からランチャーに装備されたスラッグガンを放つ。
ほぼゼロ距離から放たれた複数の分裂弾はヴェノムのか細いボディにその爪跡を残す。
『ば・・・バケモノか?!』
そんな事はお構いなしにレイフォードは更に敵を撃破していく。


―――


――数時間前

「条件・・・?」
レイフォードは鸚鵡返しのようにスミカの言葉を返した。
「そうよ、まず一つはウェンズデイ機関を壊滅させる事、そしてもう一つはこの工場街に侵入した敵の撃破よ」
スミカは今自分の置かれている立場も踏まえてレイフォードに条件を提示した。
「どうしてこの街に敵が入ってきたと?」
その言葉を聞き、レイフォードが問う。
「言った筈よ、ここへの来訪者はここ一帯に仕掛けた監視モニターでいつでも判るって」
レイフォードはその言葉を聞き、少し前にスミカが言った言葉を思い出した。


―――


「・・・後3機か・・・」
レイフォードは敵の残存勢力を確認しつつ、装甲の耐久値も確認する。
「まだ充分持つな・・・行くぞ・・・!」
そう言うとレイフォードは再び駆け出した。

『コイツ・・・何故攻撃が当たらないんだッ!!』
ヴェノム部隊は既にパニック状態に陥っていた。
攻撃も当たらず、一方的にやられて行く様に、こんな任務を請け負った自分を呪っているに違いない。

「・・・」
無言で敵を倒していくレイフォード。
命乞いをする者も居たが・・・聞く耳すら持たなかった。
「・・・凄い・・・」
スミカはただ見ている事しか出来なかった。
之だけの部隊の攻撃を、一回も被弾する事無く、尚且つ敵を確実に仕留める等、並のレイヴンには到底無理な話だ。
「でも・・・こんな芸当・・・前に彼の話を聞いた時にはまるで出て来なかった筈・・・」
スミカはふと小さな疑問を抱いた。

その答えが導き出された時には既にヴェノム部隊は全滅していた。
「・・・何だ・・・この力・・・」
レイフォードは自らの力に恐怖した。

「・・・」
そして無言のまま沈黙する。

「・・・・・・スミカ・・・」
そして口を開く。
「ウェンズデイ機関の残党の居場所をすぐに調べてくれ・・・」
暫し考え込み、スミカは口を開く。
「・・・わかったわ」


―――

彼はいつ道を踏み外したのか・・・

答えは出てこない・・・


しかしこれだけは言える・・・

彼はイレギュラーの一人たる資格がありえると・・・。

 

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