炸裂する砲弾。
銃弾の奏でる音。
交差する閃光。
ミサイルの吐き出す煙。
焼け払われる草。
巨大カタツムリと2体の巨人。
さぁて、これからどうしよう。
「・・・はぁっ。」
苦声が漏れる。そんな暇も無いような銃弾の嵐。
片方のブースタは焼き切れた。
それで、OBの出力を低く調整しつつ攻撃を躱しているが
OBは方向転換が難しい。
操作を間違えれば一瞬で蜂の巣にされるのは確実だ。
ショットガンの残弾数は20発。マガジンも格納されているのだが、装填する余裕は無い。
肩のレーザーキャノンは接続部をやられてパージした。
はっきり言って、かなり戦況は不利だ。
「スー!まだなの?そろそろ余裕無いよ!」
そろそろと言うより余裕などかなり前から無いのだが。
『あと3分30!』
「無理!1分が限界だ!スーなら出来るさ!」
「へっ・・・言ってくれる・・・。」
確かにフェイの言うとおり1分が限界かもしれない。
今はうまく避け続けているが、OBは長時間使用には適していない。
そろそろジェネレーターが焼き付いてあの攻撃に晒されるだろう。
展開開始から1分と30秒で発射準備完了するのは難しい、と言うより危険だ。
この『OGB-Sigel XX』は、簡単に言えばガスガン、エアガンの様なものだ。
空気をチャージし、それを圧縮空気にして大重量の弾丸を打ち出す。
それで発射距離によって空気の吸入量が変化するわけだが、目標・・・例のカタツムリだが、あれの発射するレールガンの射程外ギリギリから打ち込む計算でいくと約3分のチャージが必要となる。
要するに弾が敵の所まで飛ばない、と言う事だ。
「でも、まあ・・・やるしかないか。」
スーは目を閉じて深く息を吐き出すと、左膝を地面に付け構えの体勢に入る。
「砲身を展開・・・。頭部、ラジエーター電力を最低限までカット。右腕部周辺電力カット。
電力を左肩制御に集中。」
抉られた右肩から光っていたスパークが消える。
左肩に折り畳まれていた砲身が伸びる。
左手のバズーカを投げ捨てて、砲身に付いているトリガーを握る。
その砲身は他の兵器とは比べ物にならないくらい長く、標準の2脚ACの全長並の長さだ。
その長い筒状の砲身から無数にハッチが開く。
「吸入用タービン始動。電力237%集中。吸入再開。50秒で完了させる。」
轟音と共に周りの空気が吸い込まれていく。
「圧縮開始。発射対象との距離最適化・・・。距離算出。1560。吸入空気量算出。現在13%。」
「くぅっ!」
レールガンが左腕・・・のあった場所を突き抜ける。
敵の攻撃は徐々にこちらのスピードを捕らえ続けている。
ショットガンで反撃するものの、この弾幕の中近くに寄れないため接近戦では抜群の威力を発揮する散弾が広範囲に相手の装甲を傷つけるだけで、効果は見込めない。
OBの出力を瞬間的に上げて、相手の真上を取る。
真下からは垂直ミサイルがフェイめがけて飛んでくる。
それらに向かってショットガンを撃つ。
命中したミサイルはその場で爆発する。が、当て損ねたミサイルが右足に命中。軽量脚の薄い装甲が弾け飛ぶ。
「っう!・・・後37秒・・・頼む、持ってくれよ・・・!」
ミサイルが装填される前にショットガンを至近距離から2連発する。
まとまった散弾が発射口を抉り、中の弾薬もろとも吹き飛ばす。
が、その中から出てきたのは残骸ではなく均等に並んだ細長い砲身だった。
「なっ・・・リボルバーキャノン!?なんつー量の火器入ってんだよ・・・。」
OBを再起動して、いきなり現れたリボルバーキャノンの弾道から避ける。
そして、再び銃弾と閃光が襲い掛かる。
OBの緩急を付けた移動と片方だけのブースタを巧みに駆使して、弾の1発でさえ掠らせない。
「後23秒・・・行けるかな。」
「空気量76%。発射準備完了まで後23秒・・・。」
目を閉じながら呟く。
このままフェイが頑張ってくれれば行ける筈だ。まあ、射程範囲内に敵を入れるには構えたままOB全開で打ち込まなければならないが。
「最終カウントダウンを開始・・・18・・・17・・・ちっ、どうやら気づかれたようだな。さあどうするか・・・。」
あのカタツムリは徐々にではあるが、真っ直ぐこっちに向かってきている。
このままいけばレールガンの射程に入ってしまう。
こっちはもう発射体勢の構えに入っている。動く事はできない。
フェイも周囲からショットガンを撃ってはいるが、威力不足だ。
紫色の光弾が2発頭上を通り抜ける。
『しょうがないね・・・。』
フェイがOBを最大出力にしてこっちに近づいてくる。
スーの目の前に立って、ショットガンを投げ捨てる。
『・・・腕の1本2本くれてやるさ。買い直すからな・・・』
「残り11秒・・・悪いけどそれまで頼む。」
『了解・・・くっ!まだまだ!』
無数の閃光が2体目掛けて飛んでくる。
フェイがそれを右腕で阻止する。装甲が蒸発する。
腕がさっきの様に吹き飛ばされないのは、しっかりと関節部への被弾を避けながら当たっているからなのだろう。さすがはトップランカーということか。
「残り9秒・・・。」
相手が前に出てきてくれているお陰でこの場所から撃っても命中しそうな距離だ。
「・・・頼むぞ、フェイ。」
「まあ、頑張る・・・さぁっ!」
レールガンを掌で受け止め、勢いを殺さずに外へ弾く。
腕と掌で後4発が限界だろう。
「ホント、時は金なりだね。」
『6秒!』
1発。
掌で止める。
手の部分が溶解。跡形も無く消え去る。
さらに1発。
肩で止める。
装甲が消え。中の配電線が剥き出しになる。
同時に2発。
両方とも腕に着弾。
腕に2つの穴が空いたが、貫通は免れた。
「これで・・・4発。」
その言葉と同時に右腕が肩から地面に落ちる。
「次は頭とコアで止めるしか・・・」
『いや、その必要は無い。空気吸入量100%。発射準備完了。システムオールグリーン。・・・フェイ下がっていい。ありがとう。』
「どういたしまして。」
フェイはふっと笑うと壊れかけのブースタで後方に跳躍。
その瞬間、爆音と共にフェイに隠れていた砲台から円柱と円錐を組み合わせたような弾が螺旋しながらカタツムリ目掛けて飛んでいく。
レールガンが弾に向かって放たれる。
が、その弾はレールガンの閃光を弾き飛ばした。
螺旋しながら一直線に飛ぶ弾丸はカタツムリのちょうど頭に激突する。
そこから何か半透明のようなドーム状の物が轟音を響かせながら広がる。
その中にいるカタツムリは何かに押しつぶされた様に、プレスされていく。
轟音が収まる。
あのカタツムリはもう原型を留めていない。
「ふう・・・・。」
『はぁ・・・。しかし・・・あの武器は一体何だよ?』
「ちょっとは休ませろ。帰ったら教えてやるよ。」
右肩が抉られて、脚の装甲が軽量2脚くらいまで削られているACと
両腕が無く、全身傷跡だらけで満身創痍のACが並んでいる。
2体のACは微動だにしない。
遠くからACをぶら下げたヘリが10機くらいの大群でやってきている。
シスカが要請したものなのだろうか。
だが、少しだけ遅かったようだ。
少年は目を閉じて眠る。この時を。