ホーム > 小説ギャラリー > 死神と天使第一章-漆黒の中の光 第二話-
ガレージにつくと左手がゆっくりと地面につき、そのまま降ろされる。
その機体はまた元あった場所に戻り、何事もなかったように電源が落とされた。
その中から一人の男がでてきた。
歳はまだ若く20もいってない感じで身長が高く、どこか恐怖とも優しさとも見える目をしていた。
そのまま男は家の中に立ち去ろうとするが、慌てて少女が喋りだす。
「あの―ありがとうございました!私連れて行かれそうだったんですけど、
えーと・・・えー・・・助けていただいて・・・その・・・ホントにありがとうございます!」
大きく礼をしながら彼女は言った。
だがそれを聞いても何も思わなかった。
何故だかは分からない。
「・・・後は好きにしろ。」
と短く言い放ち家の中に入っていった。
少女は困惑しきった様子でその場に立ち尽くしていた。
家の中に入り、ソファにどかりと座り込む。
「ふうー」
大きなため息をついた。自分のことだが未だに何故こんなことをしたのか分からない。
やはり自分の中で、あの仕事のことが気がかりになっていたんだろう。
あまりに状況が重なったからなのだろうか。それとも・・・。
その時、ガレージからの戸が開いた。そこにはさっき自分が助けた少女がいた。
そしてそのままこちらに上がり、俺の前のソファに座った。
「・・・何か用か?」
俺が聞くがその女は当然の様に、
「好きにしろって言ったでしょ。だから好きにしてるの。」
「・・・そういう意味じゃない。」
「じゃあどういうこと?」
少し前のめりになり聞き返してくる。
顔はどうもどこか抜けているような気がするが、以外に図太い女だ。
「・・・ここは俺の家だが?」
「私ここに住むわ。」
「・・・は?」
どうも良く分からんこという女だ。自由にしてやったんだ。さっさとどこかに行けばいいのに。
「好きにしろって言ったのはどこの誰?」
「・・・」
「・・・」
「・・・分かった。じゃあ俺がここから出て行く。」
立ち上がり後ろを向くと女が俺の二の腕を掴んできた。
「それじゃ意味がないでしょ!」
「・・・何が言いたい。」
女は無理矢理俺をソファに座らせ話を始めた。
「・・・私には帰るところがないの。」
「そんなことは知っている。売られたんだろ。」
「・・・私の住んでたモルルって場所はとても裕福な場所だったんだよ・・・。」
・・・モルル?モルルだと?
俺の頭の中にあのときの光景が飛び込んでくる。
燃えている家。逃げ惑う人間。その中にあるAC。
「ちょっと聞いてるの?」
気付くと目の前に女の顔があった。どうも上の空だったようだ。
「・・・ああ、聞いてる。」
少し慌てて返事を返した。女は不思議そうな顔をしたが、話を続けた。
「・・・でもね。4日前に突然ACの襲撃にあったんだよ。」
四日前・・・AC・・・やはりそうなのか・・・。
「その時、警護のACもいたんだけど全然駄目だったんだ・・・。
私が気付いたときにはもう周りは火ばっかり。本当に火の海って感じだったわ。」
「・・・知っている。」
「え?」
女はとても驚いた顔をして俺の顔を覗き込んできた。
俺は正直言うか言わないか迷ったが、ここで吐き出せるのならマシだと思った。
「・・・その時警護についたACってのは・・・俺だ。」
「!?」
女は凄く驚いた顔をした。そりゃそうだろ。俺のせいでお前の町は壊滅した。
俺がもっと技術を持っていれば守れたはずなのに。もっと力があれば・・・。
また俺は何も守れなかったんだ。ただ無様に自分だけ生き残っているんだ。
しかし、女はすぐに元の落ち着いた顔を聞いてきた。
「・・・ねえ。あの時のこと・・・詳しく教えてくれない?」
「・・・何?」
俺は正直驚いた。俺は心の中でこの女にこの場で殴り殺されるとでも思っていた。
いや、いっそうのことそうしてくれた方が気が楽だった。
「・・・私、あのときのことあまりよく覚えてないの。」
彼女は少し悲しげな目をして言った。
「・・・できれば言いたくもないし、お前もそれを聞いていいことはないだろう。」
「・・・それでも聞きたいの。」
少し力のこもったその言葉からは強い意志を感じた。
俺は確かに話すべきだろうと何故か思った。
「・・・少し長くなるが?」
「構いません。」
俺はふうと一回深呼吸を入れると、ソファに深く座り込みあのときの情景を思い出した。
―四日前 モルル市街地―
「もうそろそろだな。今日もよろしく頼むよ、レイヴン。」
「・・・了解。」
一言だけ言うと、そのままコクピットの中に入った。
「少し無口で無愛想だがいい腕をしている。俺の跡継ぎでもしたいねえ。」
がたいのいい中年の男は、隣にいた妻を思われる女性になんとなしに言った。
「そうねえ。あんたなんかよりずっといい男だし。」
女性は軽い冗談のつもりだったようだが、男は顔をしかめてその場を離れた。
今回の仕事はこの町の護衛任務だ。
このモルルの町は、最近になり大きな資源が発掘された。それにより大きな収益を得り、急速に発達した地域である。
ここはナービスの自治区内にあるということもあり、今までは自治勢力の保護を受けてきた。
しかし、最近採掘が進むにつれ周りからの圧力が強くなってきた。
おそらくこの大きな採掘資源をみすみすナービスに渡すわけにはいかないと考えたのだろう。
クレスト製と思われるMT部隊が頻繁に攻撃を仕掛けるようになってきた。
ナービスとしてもここを渡すわけにもいかず多大な戦力を投入してきたが、
各地での地域紛争が目立つようになりそこにも配備させなくてはいかない状況となったのだ。
そこで今回期間を3日間にしぼり、その中である程度まとまった採掘をするということになった。
その3日という期間を護衛するために俺は依頼された。
既に2日を過ぎ、MT部隊を迎撃したがここを攻めるにはあまりにも少なすぎる戦力であった。
クレストとしても、ここにレイヴンが雇われていることは承知のはずだ。
それとも襲撃以外にもここには何か目的があるのだろうか。
ここにはでかい発掘用機材やタンクがあるが、それ以上に目ぼしいものは見つからない。
・・・ふと時刻を見る。5:32。周りも薄暗くなってきた頃だ。
昼間に襲撃をする馬鹿はいない。するとすればそれは、よほどの馬鹿かよっぽど自信があるかのどっちだ。
前の2回も夕刻より夜方に行われている。おそらく今日もそうであろう。
―時刻 7:02−
「クレスト製と思われる輸送機を確認。作戦を開始してください。」
オペレーターから通信が入る。俺は何も答えずにシステムを戦闘モードへ移行した。
「メインシステム 戦闘モードへ以降します。」
「敵、MT部隊を確認。迎撃してください。」
レーダーにも敵影が見える。数は3。
広範囲でないレーダーを装備していたので正確な数は確認できないが、それ以上いることは確かだ。
おそらく距離にして400〜500。俺は肩部ミサイルを構えた。
これを装備しているときは重量過多になるが、迎撃任務であれば問題はない。
ロックオン数は3つ。トリガーを引くと轟音とともにミサイルは発射された。
新たに敵影が移る。おそらくかなり数だろう。
俺は早々にミサイルを全弾発射すると、ミサイルをパージ。機動戦闘に切り替えた。
OBを展開。チャージ音の後、凄まじい速さで機体が浮く。凄まじいGではあるが、何百回と使用していればそのうち体が慣れるものだ。
ある程度の距離に来たところでOB解除。ブースターを吹かしながら距離を詰めていった。
突如MTがこちらに発砲を始める。しかし所詮は無人MT。
そのFCS性能とOS性能は極めて低くこちらに当たることはない。
前2日も同じようなもので、まったく修理をせずに今日を迎えたほどだ。
俺は右腕に装備されたアサルトライフルを使いMTの弱点である足を狙う。
クレスト製のライフルでクレスト製のMTを撃破するとは、何とも皮肉なことだ。
数は残り6。
ライフルの弾にはまだまだ余裕があったが、この距離ならば―
左腕を身構える。WL-MOONLIGHT−通称“月光”からは不気味な青い光が出ていた。
そのまま左に振る。
MTの装甲はまるで、紙をライターで燃やしたように一瞬で融解され、
胴体部と間接部は綺麗に半分に切られそのまま地面に落ちる。
目の前にはもう一機。
MTは発砲をしてきたが、月光の出力を持ってしていれば―
月光の光は弾丸をも滅し、そのままMTに直撃。胴体部は融解されそのまま爆発。
残りのMTもおそらく一撃も食らうことなく撃破した。
青い光が綺麗な弧を描き敵の装甲を焼いていく様は、まさしく月光と呼ぶのにふさわしい。
俺は初めてこれを見たときからとても気に入っていた。
仕事ではすべてこいつを使っている。まさしく相棒といったところだ。
すべてのMTを撃破し、その場は原型を留めていない金属の塊ばかりであった。
「7:21、作戦終了。」
オペレーターに報告をする。
『敵機の反応ありません。作戦を終了・・・!待ってください!』
少し驚いたオペレーターは何やら慌しそうにしている。
「クレスト製輸送機、更に確認!」
(増援か・・・それともこちらが本命・・・。)
「敵AC投下を確認。さ、三機です!」
「・・・何!?」
少し曇った空を見上げるとそこには大型輸送機。ハッチは既に開いており、光が3つ見えた。
バニシングドライブ(モルル戦闘時)
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