ホーム > 小説ギャラリー > 死神と天使第一章-漆黒の中の光 第四話-
瞼を閉じているが、もれる光からは朝になったことがすぐに分かった。
うっすらと目を開けると、ぼんやりではあるがリビングの天井が見える。
何故自分の部屋でないのか考える・・・。
・・・そうだ。昨日押しかけたあの女が俺の部屋を使っている。
部屋は他にもあるが急のことだった、というよりは予想外のことだったので俺の部屋を使わせた。
それで俺はリビングのソファで寝たということである。
まだ半分寝ぼけながら携帯端末の時計を見る。―7:32
昨日アイツが寝る前に端末からメールを見たが、仕事が入ってなかったので今日はのんびりしようと思っていたのだが・・・。
ゆっくりと体を起こすと窓からいつもより光が入っていることに気がつく。
見ると、閉めておいたはずのブラインドがすべて開けられている。
多分、忘れたのだろうと勝手に思ったのだが違っていた。
「意外に遅いお目覚めですねえ。」
そこには少し呆れた様子で立っている昨日の女。
・・・つまり、俺より早く起きたコイツが開けたということだ。
「ご飯あなたの分も作ってあるんだから早く起きてよ。」
言いたいことは沢山あったが、朝から喋る気にはならなかったので何も言わずに起き上がる。
既にテーブルには皿に盛られた野菜と数枚のパン。
おそらく冷蔵庫をあさりにあさってこれだけ見つけたのだろう。
時々自炊もするが、大体が外で済ませるので冷蔵庫にはろくなものが入ってないはずだ。
椅子に座りテレビを付ける。適当にチャンネルを回し、ニュース番組にする。
「―ミラージュ・クレスト両社はACによる軍隊を独自の防衛力とし、これによる会社に対する攻撃・制圧もあり得ると発表し、
OAEからの調査団の受け入れを拒否しました―。
次のニュースです。中立居住地区となっている145,32ですが―」
最近はクレストの頻繁な動きが見られる。ネイルズに抜かれて躍起になっているのだろう。
しかし、ネイルズはそれに対して何も行動を起こしていない。おそらく何かあるのだろう。
色々考えていると、キッチンから出てきた女が横の椅子に座り込んだ。
「それにしても何にもないんだねえ。本当にここで生活してるの?」
人の家に勝手に住みつき、ケチをつける。なんて女だ。
少し彼女の目を睨み、そのまま何にも塗っていないパンをかじる。
女も少し言い過ぎたかと思ったのか、少し視線を下ろす。
それにしてもさっきから変な臭いする。なんか汗臭いというか、凄い刺激臭が。
彼女も俺が臭がっていることに気付き口を開ける。
「そ、そんなに臭い?お風呂に入ってないのは4日ぐらいだよ?」
どうやら原因はコイツのようだ。
昨日はそんなに見なかったが彼女をまじまじと見てみる。
青い目にショートカットの髪型。背は俺より低い。160ちょっとといったところか。
男達に抵抗したのか、服は所々破れている。
「そういえばまだ名前言ってなかったね。私の名前はフリア=シャンフル。まあフリアでいいよ。
あなたの名前は?」
「・・・」
「答えないの?まあいいけど。カイル=フィンバーさん。」
「な!?」
当然のように俺の名前を言い放つ。
「何で知っているかって?まああなたの部屋に泊めさせてもらったんだもん。
色々調べさせてもらったわよ。RN KILL 本名 カイル=フィンバー。18歳。レイブン歴2年。
アークに所属しているけどランク外だってね。それにしてもタメなら敬語なんて使って損した気分。」
フリアは持っていた紙をヒラヒラさせながら、満足そうな顔をして言った。
・・・何も言いたくなかった。
こんな人間を信用した自分が情けなかった。
色々考えながらだったのでいつ食べ終わったのか気付かなかった。
見るとパンは全てなくなっている。野菜もカスが残っている程度だ。
「ご馳走様!」
そう言い終えると食器を片付け始めた。朝からかなり五月蝿い。
そのまま適当にニュースを見ていた。企業間の闘争が激しくなっているというのに、民間人は平和なものだ。
著名人や最近の流行のことなのでいっぱいだ。本来はそうあるべきなのだが、状況が状況だ。まさに戦争状態だ。
しかし、それに対して民間人も慣れ過ぎているというのもある。
更に民間人は、企業が闘争の原因としているようでレイヴンにはまったくの嫌悪を示さない。
だからアリーナという観客を沸かせるだけの、ある種見せ物ができたのだ。俺はそんな矛盾からアリーナに参加していない。
アークに登録しているのでアリーナに入っているが、さっきも言われたとおりランク外。
確かにランクを上げればレイヴンとしての評判が良くなるのは当然であり、それはいいことである。
しかし、俺は仕事でもないのに無意味にACと戦い、誰かを傷つけるのは嫌だ。
生温い考えであることは自分でも分かってはいるが、身体が動こうとしないのだ。
気付くとまたあの悪臭が近くにあった。本当にこれはかなりきつい。
「・・・お前金ないのか?」
少し首を傾げたが
「あるわけ無いじゃん。危うく売られそうなっていた乙女がお金なんて持ってるわけないでしょ。」
乙女・・・確かに顔は悪くないしスタイルも悪くないが、この性格はどうも・・・。
少し呆れた表情をすると、彼女は不満そうにほっぺたを膨らませた。
俺は携帯端末を取り出すと、銀行端末から50000c引き出した。そのまま端末を渡す。
「・・・これで服でもなんでも買ってこい。」
表示を見た彼女はビックリした様子で
「こんなに貰っていいの?」
「・・・仕方ない。その服はやめろ。」
どう考えてもその服がこの悪臭の原因だ。服もこれしかないのであれば、今後もこうなることは分かりきっていた。
「でも・・・」
少し困った表情で俺を見てくる。まだ足りないのか、とも思ったが。
「町まで結構あるし、一人じゃ無理だよ。」
「・・・」
(結局こうなるのか。)
俺は静かに椅子から立ち上がった。
<-- BACK | 小説ギャラリー | NEXT -->