ホーム > 小説ギャラリー > 死神と天使第一章-漆黒の中の光 第七話-
さっき通信があり、在庫があるので今日の午後には届けられるとのことだ。
これを聞き、俺はガレージに行った。作業がしやすいようにある程度しておこうと思ったのだ。
ガレージの中は昼間でも薄暗い。すぐに電気を付けるといつもと変わらずACがそこにある。
装換するのはバニシングドライブの方だ。なので、まっすぐに左側に置いてあるACに向かう。
服の裾をまくり、軍手をつける。そのまま機体の周りを回りながら見てみた。
これは機動機体なので特にブースター・ジェネレーター類の消耗が激しい。この前の戦闘でWB31B-PEGASUSもかなりの損傷を負った。かすっただけと言えど、爆発する危険性もある。一応整備には出したが、この先も大丈夫という保障はない。この後届くNB12W-WINGを付けるためにもこれは外しておこう。そう思い、作業用クレーンを操作し肩部まで持っていく。
中々慎重な作業で、とても神経を使うことなのだ。業者に頼めばすぐにでもやってくれるが、そのたびに呼んでいたら金もかかるし、凄い手間がかかる。なので少しでも慣れるために自分でやるようにしている。そのとき、ガレージの入り口が勢いよく開いた。
「なにしてんの〜?五月蝿いわよ。」
見ると、新しい服に着替えたフリアが半分寝ぼけたような目で怒鳴ってきた。多分あの後、整理などしてるうちに寝てしまったのだろう。
おぼつかない足取りで俺の近くまで来ると、そのまま倒れそうになる。慌ててその体の下に入り込み体制を立て直すが、俺が離すと倒れそうになるぐらいフラフラしていた。かなり疲れがたまっていたようだ。
「・・・まったく。」
半分呆れていたが、ここで寝られても困るのでそのまま背中に担ぎリビングに運ぶことにした。
しかし、両手がふさがっている状態で戸を開けるのはかなりきつい。
そんな苦労を知ってか知らずか寝てしまったようで、耳元で小さな寝息が聞こえる。
リビングのソファにゆっくりと下ろすと、そのまま倒れこみぐっすりと眠り込んでしまった。
また作業を進めると起きてしまいそうなのでやめておいた。と言っても、WB31B-PEGASUSは外しておいたので大きな作業は特に残っていない。
すると途端にやることがなくなった。出掛けてきたばかりだし買出しの必要もない。
ふとフリアを見てみると、とてもいい寝顔をしている。寝ていれば静かで、可愛いものだが・・・。
そのままソファに腰掛けると、しばらくフリアの寝顔を見ていた・・・。
「ねえ、これなんかいいんじゃない?」
「そうか・・・?アレなんかもいいんじゃないか?」
俺は彼女が持っている服ではなく、横にかかっている服を指で指して言った。
「そうかあ・・・でもカイルさんが気に入ってくれればいいかもね。」
「・・・なあ。いい加減その“さん”付けはやめてくれないか?」
「え・・・?でもなんか・・・恥ずかしいし・・・。」
少し頬を赤らめながら、目線を合わせないようにして彼女は言った。その仕草がとても可愛らしい。でも長年一緒にいて“さん”付けは他人行儀のような気がして嫌だった。
「俺は“さん”なんかつけないで呼んでるぞ。」
「うん・・・分かった。今度からはそういう風にするよ、カイル・・・。」
一瞬“さん”と言いかけたが、ハッと気付き慌てて口を手で隠す。こういう一つ一つの仕草がとても可愛らしく、小動物を一日中観察しているような面白さと愛嬌がある。
「よしよし。よくやった。」
俺が優しく彼女の頭を撫でてやるが
「さ、さすがにそれは恥ずかしいよ・・・。私ももう16だよ?」
と言いながらもまんざらでない様子で、少し微笑みながら言った。
「そうだな。じゃあやっぱりこの服にするか。」
俺は彼女が持っていた服を手に取り言った。
「え?でもさっきはあっちの方がいいって・・・。」
「やっぱり自分に合う服は自分がよく知ってるし、着る人が綺麗ならどんな服でも似合うよ。」
「またそんなことばっかり言うしい〜・・・。」
と、また恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「ハハハ。じゃあこれを買うか。」
と半分笑いながら彼女の肩に手をやった。
「そうだね。じゃあこれ買ったら次のお店ね。」
と嬉しそうに俺の方を見上げてくる。
「まだ行くのか?これで7軒目じゃないか?」
「久しぶりのデートなんだからこれぐらい我慢、我慢。」
と俺の胸を軽く叩くと、軽い駆け足で店の外に出て行ってしまった。
「まったく・・・しょうがないなあ。」
俺も店を出ようとする。しかし次の瞬間、体がまったく動かなくなる。
「何!?これは―おい!―――」
とたんに俺の喉から声が出なくなる。どんなに大きな声で叫んでみても、一向に声は出ない。
彼女はそんなことを知らずに、そのままの速さで俺から遠のいていく。
「―――」
夢中に彼女の名前を叫んだが、彼女は気付かずにそのまま光の中に消えていく。
「―クリッ・・・!」
次の瞬間、ハッと気付く。そこには天井。周りを見るといつものリビングがそこにあった。
フリアも相変わらず寝たままだ。どうもあのまま寝てしまったらしい。
右手をゆっくりと開き見てみると、すごく汗をかいているのが分かった。
「夢・・・か。」
現実に引き返されたとたんに空しさを感じる。それにしても昔の夢を見たものだ。まだ鮮明に覚えているほどに、リアルな夢だった。いや、実際あんな感じだったかもしれない。そもそも今の自分が現実のものなのか、夢なのかなんて分からない。今まで見てきたものはまさしく悪夢のようなことばかりで、本当のことではなかったのかもしれない。しかし、そんな思考を拒むかのように現実という壁が俺に迫り来る。
「ん〜よく寝たあ〜・・・ん?なんで私こんなとこにいるの?」
大きく伸びをして起きたかと思うと、半分寝たままの目で周りをキョロキョロと見だした。
そこにいるのはフリアであり、彼女ではない。どんなに可愛くてもどんなに綺麗でもどんなに一緒にいようが彼女ではないのだ。
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