ホーム > 小説ギャラリー > 死神と天使第二章-過去のしがらみ 第六話-
『フィンバー軍曹。今回はお前の実力の見極めということもある。全力でいけよ。』
「・・・了解。」
ビルに姿を隠し頭部だけを少し横から覗かせ、目視とレーダーにより相手の行動を見ることにした。
こちらからうかつに動けば2対1の形になってしまう。
ダイルが俺のことを見ると言った以上、後方支援ぐらいしか期待できない。
しばらくそのまま見ていると、一機がこちらに向かってくるのが分かった。
ビルの隙間に時々見える程度なので、正確に一機とは言えなかったが。
「敵影一機確認。」
『了解。俺は機体を固定させる。お前が誘導してくれ。』
「了解。」
ダイル機はその場でリニアキャノンを構えた。俺は静かにブースターペダルを踏み込んだ。
低消費型のブースターなので、熱量・エネルギー残量もさほど気にならない。
俺はビルに姿を隠しながら、少しずつ前に進んでいった。
相手もおそらく同じFCS・頭部パーツを装備しているので、こちらが確認できないということは相手もできないということであろう。
その時、表示に“LOOK
ON”と出る。
―ドーン!
直後、目の前のビルが煙を上げて崩れ落ちた。
「何!?」
俺は急いで機体を後退させると一つ後ろにあるビルに姿を隠した。
(ビルを破壊できるほどの攻撃となるとリニアキャノン・・・
相手は機体を固定させるだけの余裕があるのか・・・。)
―ドーン!
少し機体を右に動かすと先ほどと同じようにこちらに砲弾が飛んできた。
先ほどよりもきつかったが、辛くもかわすことができた。
(相手は一機なのか?それともこれ自体がダミー・・・本命は気づかれないように回ったのか。)
と思い、少し左を見る。
次の瞬間、レーダーに2つの赤い光が表示されたかと思うと同時に“LOOK ON”の文字が表示された。
赤い点は俺を挟むように前後に表示されている。
(ちっ!気づくのが遅かったか。)
俺はビルの間を掻い潜るように移動するが、空中からライフルの弾丸が雨のように降ってくる。
『逃げてばっかりじゃ駄目だよ、ぼっちゃん。』
『素人は素人らしくさっさと消えな。ヒャハハ。』
俺は移動しながら機体を後ろにいた機体に絞り、ミサイルを発射した。
肩からは小型ミサイルが3発轟音ととともに相手に向かって飛んでいった。
『無駄だよ無駄。』
機体には迎撃ミサイルが搭載されているので容易に回避された。しかし、狙いはこれではない。
「隊長!」
『おう!』
隊長の声と同時に、目の前に機体右側面から爆煙が上がった。
『何!?』
空中にあった機体は大きくバランスを崩し、右方向に落ちていく。
「もらった!」
俺はブースターで素早く相手機体の右側面に近づくと、ライフルを発射した。
弾は全弾命中し迎撃ミサイルが爆発した。俺はそのまま突っ込み左腕に装備されたブレードを構えた。
そしてブレードから放たれた光は相手機体の右腕を貫通し、頭部も貫いた。
『4−2機の一定以上の破壊を確認。バーン少尉は戦闘を中止してください。』
見ると4−2機と呼ばれた機体からは大きな黒煙が上がっている。少し安心した次の瞬間―
『俺を忘れんなよ!ヒャハハ!』
と後ろから物凄い衝撃が走る。
―バーン!
リニアキャノンが直撃してしまったようだ。
「ぐ!」
俺は急いで機体を旋回させようとするが、相手も同じ旋回性能と移動速度。
まったく俺は前を取ることができない。
『ヒャハハ!死ね!』
とレーダーでミサイルと思われる赤い光が3つ確認できた。
(・・・まずい!)
俺はとっさに空中でリニアキャノンを構えた。そして真下の方向に向けて発射した。
ブースターでは制御しきれずに、そのまま機体が後ろに凄い速度で回転した。
一瞬天地がひっくり返り、その時ロックオンサイトが赤くなった。
「いけ!」
何も考えずにトリガーを引いた。相手のACは逆さまに見えていたが、被弾したのは確認できた。
俺は機体を制御しきれず、後部から思い切り墜落してしまった。
その時目の前に一機のACが見えた。
『これで終わりだぜ!ヒャハハ!』
その機体はライフルをこちらに構えている。
もう駄目かと思った。
次の瞬間―
目の前のACの後頭部から爆煙が上がった。機体はそのまま飛ばされ後ろのビルに突っ込むような轟音がした。
『ご苦労だったな。軍曹。お前さんの腕はよく分かった。少しそこで寝ていろ。』
とダイル機が俺の機体の上を通りすぎ、そのまま後ろに飛んでいってしまった。そして次の瞬間
『4−1機の一定以上の破壊を確認。第4チームの敗北が確定しました。訓練を終了してください。』
とオペレーターからの通信が入った。しかしクリスではなかった。
通信の後すぐに回収用の輸送機がこちらに到着し、機体を乗せ訓練場を後にした。
「フィンバー軍曹。中々の腕前だったぞ。今まで下の部隊にいたのが勿体無いくらいだ。」
「・・・いえ。ありがとうございます。」
第7倉庫に戻るとダイル隊長から色々なことを言われた。
俺の操縦の癖や、もう少し機体のことも考えてやれとのことだった。
実際先ほどの演習で俺の機体は決められた損傷率のギリギリだ。
勿論主な修理は俺がやるのだが・・・。
修理といっても資材などで補強する程度だ。
そこまで資金をかけられないということなのだろう。
実際実弾での演習は久しぶりのことだったそうだ。
いつもは新人に“実力の差”というものを教え込むためにするらしい。
それが意外な結果と終わったせいで、他の隊員は不機嫌な表情をしている。
第2チームと第3チームの戦闘も見たが、腕としてはあまりうまいと言えるものではなかった。
何か皆がふざけ半分で演習をしている気がするのだ。
そう思えると軍というものはただの肩書きなのではないかと思ってしまう・・・。
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