ホーム > 小説ギャラリー > 死神と天使第二章-過去のしがらみ 第八話-
「カタカタ・・・」
ふと不思議な音がして目が覚めた。目を開け音のしているほうに目をやると、一人の女性がPCの前に座っているのが見えた。
長い綺麗な金髪が光って見えた。俺は静かにベッドから起きると、女性のすぐ後ろまで近づいてみた。
50cmぐらいまで近づいたところでその女性がリサであることが分かった。
声をかけようと肩に手をやろうとしたとき、PCの画面に目がいった。そこには昨日の戦闘の内容が書いてあった。
そこには数枚の画像が貼られていたが、そこにはあの画像もあった。
「!これは!」
「うわあ!」
リサがその場で飛び上がって驚いた。そして
「ぐ、軍曹でしたか・・・。流石に驚きました・・・。」
いきなり後ろから大声出されたら普通はそうだろうな。
「あ・・・すまんな。それでこれは・・・。」
「あ、はい。これは先日の戦闘記録です。何故か軍のデータベースに残ってなかったんで、
私が記録しておいた範囲で報告書を書いているんですが・・・。」
「でかした!」
「え・・・はい。ありがとうございます。」
今一状況が飲み込めていないという状態だったが、リサは軽く頭を下げた。
その画像、おそらく撃破されたACのコクピットの映像記録であろう。かなりの至近距離での画像だ。
よくよく見てみてもそのパーツに心当たりはまったくない。おそらくほとんどが新作のパーツか、非売品パーツ、もしくは不正に造られたもの・・・。
キャノンはACの装甲をも貫通し、岩壁さえも吹き飛ばすほどの威力だ。
そんなものなどCR-WBW98LXしか心当たりがないが、左肩に異なるパーツを装備していたことから、これはありえない。
その左肩のパーツは推測するにECMメーカー。距離が近づくと比例するように高度のノイズになる。
ネイルズの新作かもしれないが、それはまだ分からない。
右腕に装備されたマシンガン兼グレネード。これは自作パーツの可能性が高い。
マシンガンの形状はCR-WR69Mによく酷似しているが、グレネードの砲身は自作だと思われる。
ブレードの光は青色であったが、これも形状が他のどのパーツにも酷似しない。
エクステンションにはシールドに似たパーツであったが、裏側にはブースターユニットが付けられている。
CR-E82SS2にブースターを付けたようにも見えるが・・・。ACの外見もどこかクレスト製のものにも見えるが、正確には分からない。
「う〜ん・・・。」
俺がしばらく一人で唸っていると・・・
「そういえばこのACってなんかクレスト製って気がしません?」
「あ?ああ・・・俺もそう思っていたんだが・・・ん?」
「?どうしました?」
もう一度考えてみる。CR-WBW98LX、CR-WR69M、CR-E82SS2・・・すべてクレスト製のパーツだ。
更にクレスト製によく似たパーツで構成されたAC・・・。このACはクレストの専属ACなのか?
しかし何故自分の会社の部隊を襲わせる必要がある?更に相手のパイロットは俺の事を少なからず知っているようだった。
今回も作戦記録がまったく残っていないのも何故だ?今回も?そういえば何故前回の“グレイクラウド”との戦闘記録さえも残されていないのだ?
その時のオペレーターがすぐに除隊したのも何故だ?
「・・・軍曹。どうしました?」
気づくと目の前にリサの顔があった。不思議そうな顔をして、首を傾げながら俺の方を見てきた。
「いや・・・何でもない。」
それだけ言うと俺はその場から離れ、ベッドの上に仰向けに倒れこんだ。
(一体何を考えている・・・クレスト・・・。)
そのまま静かに目を閉じ、再び眠りについた。
−二日後−
俺の元に通信が入った。取るとそれは聞きなれない声であった。
『カイル=フィンバー軍曹。ただちに第四司令部まで出頭するように。』
それだけ言うと一方的に通信を切られてしまった。
俺は今後の事を色々考えながら、制服に着替えると第四司令部に向かった。
第四指令部は主に部隊編成や配属・転属などを指揮する場所だ。おそらく俺の今度の部隊の配属が決定されたのだろう。
「カイル=フィンバー軍曹入ります。」
戸を開けると前には大きな協議台があり数人の幹部が座っていた。
「そこで待機。」
すぐ横にいた上官らしき男にそう言われた。その数秒後、今度はヴァンダルが入ってきた。
最後に何故かリサも入ってきた。二人は俺の左側に順に並んでいった。
そして真ん中に座っている協議委員長らしき人物が口を開いた。
「カイル=フィンバー軍曹。ヴァンダル=イエーガー曹長。リサ=ライズ三等兵。以上三名を除隊処分とする。以上。」
「・・・」
「え?」
「何だって?」
ヴァンダルとリサが反応した。当然といえば当然だが俺は少しは予想していたかもしれない。
「何で私達が除隊処分なんですか?作戦は成功したはずなんじゃないですか?」
「そうだぜ。隊長殿がミラージュのACをやったんだろ?なら成功じゃないのか?」
それについての返答はしばらくなかったが、ようやく真ん中の男が口を開いた。
「これは上の決定だ。変更はない。以上。」
上の決定?これは軍全体が絡んでいるというのか?それとももっと上・・・会社か?
「まだ二週間だというのに解雇されてしまうんですか?」
「俺はお前らが入ってくれと言ったからきたんだぞ。それでまたレイヴンに戻れと?」
「五月蝿い。決定に変更はない。」
男達がその場を立ち去ろうとする。
「俺達二人は作戦失敗が理由で除隊にされたとしても、オペレーターは関係ないんじゃないですか?」
俺は聞いてみたが、あの男の返答は同じだ。
「オペレーターも同じ処分だ。作戦に関わる者すべてだ。」
男達はそのまま静かに横のドアから退室していった。
「・・・」
俺達三人はしばらくその場で立ち尽くしたままだった。そして静かにその部屋から出た。
部屋に戻っても先ほどのことを考えていた。やはり今回のことは不審な点が数多くある。
前回の作戦でオペレーターが処分されたようにリサが処分されたとしたら、今後もどうなるか分からない。
除隊後に何かされるかもしれない。そんな不安ばかりだった。
「コンコン」
ふとドアをノックする音が聞こえた。
「・・・ちょっといいですか?」
その声はリサだった。凄く沈んだ声であった。
「ああ」
俺が返事を返すと静かに部屋の中に入ってきた。やはり随分元気がないようだ。
リサは黙ったまま静かにベッドの俺の横に座った。
「・・・」
しばらく何も話さなかったがリサの方から話しかけてきた。
「カイルさんは今後どうしますか?」
二人の時はいつしか名前で呼び合うようになっていた。
「俺は・・・レイヴンになる。」
「レイヴン・・・ですか?」
少し不安な顔で俺を見てきた。
「レイヴンになって・・・生きてみせる。この世の中を。」
特に理由があったわけではない。ただ俺にはACの操縦しかできないと思ったからだ。
「・・・そうですか・・・。」
リサは少し天井を見上げるようにして何かを考えているようだった。そして
「じゃあ私はオペレーターになります。カイルさん専属のオペレーターに。」
「何?」
「それでカイルさんのサポートをします。カイルさんが生き抜くのをこの目でしっかりと見てみせます。」
リサは天井を見たまま静かに言った。リサの横顔には確かな決心の顔が見てとれた。
「そうか・・・じゃあ頼むぞ。」
「・・・はい。」
今度は俺の方を見て笑顔でそう答えてくれた。
気付くと俺は一人で思い出に浸っていたらしい。フリアは半分呆れたような表情でこちらを見ている。
「・・・つまり奴はヴァンダル。軍にいたときの部下だ。」
「まあ大体の話は分かったけど・・・途中口に出してなかったところとか結構あったよ?特に最後の方とかほとんど聞こえてないし。」
「・・・これで話は終わりだ。」
俺がソファから立ち上がり、冷蔵庫に向かう。
「ちょっと!その後はどうなったの?そのリサってオペレーターは?」
「・・・」
「聞いてるの!?」
「・・・あいつは・・・遠いところに行った。」
「遠いところ?どういうこと?」
「・・・」
俺はそのまま冷蔵庫から主人から貰った弁当を取り出すと、そのままテーブルへと向かった。
「ちょっとはっきりしなさいよ。」
フリアは俺の後ろをすぐについてきて俺の目の前で止まって、こっちを見上げてくる。
「・・・お前には関係のないことだ。」
「ここまで話しておいて関係ないって!?」
「関係がないと言ったら関係ないんだ!」
いきなり大声出したせいかフリアはビックリして、そのまま俯いてしまった。
「・・・」
「・・・」
俺は弁当箱を持ったまま、そのまま階段に向かった。フリアは依然そのままだ。
「・・・スマンな・・・。」
聞こえるか聞こえないぐらいの小さい声で言うと、そのまま自分の部屋に入った。
「俺は何、女に八つ当たりしてるんだ・・・。」
一人自己嫌悪に入ると、そのままベッドに倒れこむようにしてうつ伏せになった。
そして弁当を食っていないことなど忘れ、そのまま眠りについた。
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