ホーム > 小説ギャラリー > 死神と天使第二章-過去のしがらみ 第九話-
ふと目が覚めた。いつもより部屋の中が暗い気がする。
枕元にある時計を見てみる。−5:07。季節は夏に差し掛かる前だったが、まだこの時間は暗いようだ。
こんなに早く目が覚めることなどあまりないので、何時に日が昇るなど知っているはずもなかった。
「ぐー」
途端に腹の虫が鳴った。そういえば昨日は飯を食っていなかった。それに早く寝たことも重なって早く起きてしまったのだろう。
そのまま起き上がると、軽く左腕を回してみた。いつも通りだと一人で思って、弁当を片手に持ち部屋のドアを開けた。
リビングのテーブルで一人飯を食べていると、二階の方でガトゴトを音がし始めた。おそらくフリアが起きたのだろう。しかし次の瞬間、
「ドン!」
と大きな音がした。恐らくベッドから落ちた音・・・。
「・・・阿保か。」
そのまましばらく弁当を食べていると、二階からフリアが降りてきた。
「あら?今日はやけに早いのね。まだ5時半よ?」
フリアは昨日のことなど気にしてない様子で、俺に話しかけてくる。
「・・・」
「はいはい、相変わらず答えは無言ですか。」
刺々しい言葉を残すと、そのまま冷蔵庫に向かう。そして中から弁当箱を一つ取り出すと、テーブルの俺の向かい側に座った。
そしてそのまま無言で弁当を食べ始めた。
俺もそのまま弁当を食べ、数分後には食べ終わった。そして、俺が席から立ち上がろうとすると
「ほうひえふぁ、ふぁんふぁふほうふぁっふぁふぉ?」
「・・・は?」
俺には宇宙語は翻訳できない。日本語でしゃべってくれ。
フリアは口に入ったご飯を急いで噛み砕くと一気に飲み込んだ。そして
「端末下に下ろしてくれるんじゃなかったの?携帯端末だと情報分かりづらくて。」
そういえばそんなことを言った気もする。正直俺自身携帯端末だと通信状態が悪かったりであまり好きじゃない。
携帯端末は固定端末と違って衛星回線を使用するので地上でのノイズの影響も大きい、ので時々誤作動を起こす。もう慣れたが。
俺は周りを見渡し端末の置けそうなところを適当に探した。テレビの近くのスペースが余っていたのでそこに持っていこうと考えた。
俺の部屋に行き回線や電源を抜き、そのまま持ち上げ下に持っていった。
そのスペースに端末を置くと電源を差込み、回線を接続した。そして端末を起動する。特に誤作動もなく数秒で正常に立ち上がった。
そのままメールの受信箱を見た。すると、新しくメールが来ていた。送り主はミラージュ。恐らく仕事の依頼だ。
そのまま中身を確認する。
『今回は当社の航空施設の防衛を依頼したい。明日7日時刻14:00に重要人物を乗せた飛行機が空港に到着する。
情報が漏れている可能性が高いため他企業からの襲撃が予想される。そのため13:30より14:30まで周辺の警護をしてもらいたい。
今回は敵戦力が不明なため万全の状態で行ってもらいたい。そのため今回は複数のレイヴンと同時行ってもらう。
寮機については特に指定しないが、腕も信用できるレイヴンを頼む。
尚、レイヴンとして分かっていると思うが、今回の作戦についての情報は一切他言無用だ。いい返事を期待している。では。』
「・・・」
報酬金額は115000c。明日といっても昨日入ったメールなので作戦は今日だ。
最近は企業の独自の軍隊のせいで一回の作戦に展開するACの数が爆発的に増えた。
そのせいで依頼にも単機ではなく、複数のACで作戦を展開するものが増えてきた。
特に断る理由もないので、そのままオペレーターに通信を入れた。
数秒のコール音の後、端末画面にロングの髪の女性が映った。
『おはようございます、レイヴン。』
「・・・作戦を受諾した。詳しくはメールを送った。」
『はい・・・確認しました。少し待ってください。』
それからしばらく彼女はメールを読み始めた。このオペレーターの名前はミリ=ファルバード。
約1年前から俺のオペレーターとして配属された。歳は知らないが22.3といったところだろう。いつも真面目で優秀なオペレーターだが、時々俺を年下扱いをして心配をしてくるのが少し気に入らない。
本人としては心配しているだけかもしれないが、俺にしてみれば大きなお世話だ。
『レイヴン、今回の作戦における寮機をどうしましょうか?特に指定がなければこちらから人選をしますが。』
「ああ・・・頼―」
「ちょっとー!」
ミリは驚いたが、俺のそのまま後ろを振り返った。そこにはフリアがいた。
「私がいるんだからわざわざ他に頼む必要なんてないでしょ。それにそうすれば報酬は全部こっちに入ってくるし。」
「・・・」
俺は無言で振り返るとまた通信を再開しようとした。しかし
「ちょっと無視しないでよ!」
「・・・五月蝿い。」
「何ですって!?」
「五月蝿いものは五月蝿い。」
「むかー!そこまで言うかー!」
とフリアが俺の首を絞めてくる。
「うぐ・・・。」
「このやろー!私にやらせなさい!」
「・・・」
「まだ言わないかー!」
と更にきつく絞めてくる。正直本気で締めてきている。かなりきつい状態だ。
『あの・・・』
ふと端末には混乱した様子でおどおどしたミリが映っている。
「何!?」
フリアが答えると
『あなたはどなたですか?カイルさんとはどういう関係ですか?』
「どういう関係ねえ・・・う〜ん・・・。」
と腕に力が少し緩んだ。やっと呼吸ができて大きく深呼吸をした。そして質問には俺が答えた。
「・・・コイツはただ俺の家に住み込んでいる居候の疫病神だ。」
「何ですってー!?」
とまた首が絞まる。さっきよりはるかに強い力で。
「ぐ・・・分かった・・・から・・・離してくれ。」
「何が分かったって?」
「お前が・・・作戦に参加すればいいんだろ・・・」
「それだけじゃないでしょ!?」
「ぐ・・・」
もうそろっと限界だ。頭がボーッとしてくる。
『あの・・・カイルさん死んでしまいそうなんですけど・・・。』
「え?」
と突然腕が首から離された。俺はその場で荒く呼吸をした。
「はあ・・・はあ・・・殺す気か。」
「やあ〜ごめんごめん。遂、力が入っちゃって。」
「遂で・・・人一人殺すのか・・・お前は。」
「まあまあ。」
と二人で色々と口論をしていると
『あの・・・結局あなたは誰なんですか?』
と話題が元に戻った。
「私はフリア=シャンフル。RNはブレイブ。アークにも登録してあるし、適当に調べておいて。」
『・・・確認しました。確かにアーク所属のレイヴンですね。でも何故―』
「というわけで私が寮機として参加するからお願いねー。アイファンにも連絡しといてねー。」
とガレージの方に走っていってしまった。
「・・・」
まさに台風の後の静けさといった感じだ。俺しかいない部屋は途端に静かになった。
『あの・・・結局あの人とカイルさんはどういう関係なんですか?』
とても気になるという風に話しかけてくる。
「・・・そんなに気になるか?」
『え?まあ・・・はい・・・。』
少し目を逸らしてミリは答えた。
「そうだな・・・道端で拾った、捨てられた子犬だな。」
『・・・?』
ミリはわけが分からないといった表情をしている。
「・・・以上だ。通信を切るぞ。」
『はい・・・そういえば今日はやけに早いですね?』
「・・・アイツのせいだ。」
と一言答えると通信端末を切断した。
その後、フリア用の回線を接続し、設定などを一通り終えた。時刻はまだ6時。
もう一眠りするかと思い、俺は部屋に戻るとそのまままた眠りについた。
『ピーピー!』
途端に変な音が鳴り目が覚める。頭の中はボーとしていたが徐々に鮮明になっていく。
そのまま手を伸ばし通信端末のボタンを適当に押す。
『レイ・・・ヴン?手しか映っていませんけど大丈夫ですか?』
「・・・ああ。」
『そうですか。10分後にそちらにミラージュの輸送機がくる手筈になっているので準備をお願いします。』
「何!?」
飛び起きて時間を確認する。―12:20。流石に寝すぎた。ろくにACの調整もしてないというのに。
急いでかけてある戦闘用スーツをハンガーから外すと、そのまま服を勢いよく脱いだ。
『きゃあ!』
と悲鳴が聞こえたかと思うと、そのまま通信が切断された。
しかしかまってられる程余裕がなかったので数十秒で着替えを済ますと、そのままガレージに直行した。
ガレージに行くと既にフリアがスーツに着替えた状態で待っていた。
「遅〜い!いつもこんなギリギリのことしてるの?」
「・・・五月蝿い。」
「はいはい。また五月蝿いですか。どうせ私は五月蝿いですよーだ。」
と舌を出してべーの顔をしている。俺はそんなのは構う余裕もなく機体のチェックに入った。
昨日換装したばかりで特に不正常なところはないと思うが。コクピットに勢いよく入るとそのまま電源をつけた。
正常に各部のチェックが行われる。そして
『システム 通常モード 起動します。』
どうやら大丈夫なようだ。輸送機が来るまであと少ししかないが、何とか間に合ってよかった。
「キーーン・・・」
と突如として輸送機の滑走音がする。間一髪だ。
『じゃあ行きますか!』
とフリアは既にワイルドファングに乗り、そのままガレージから出ようとしていた。
『あれ・・・?これどこから出られるの?』
と辺りを見渡しているのが、頭部が動いてるのでよく分かる。
「・・・足元にあるフットペダルだ。」
『ん・・・ああ、これか。よいしょ。』
とワイルドファングの右足が少し前に出て、ペダルを踏む。すると台がゆっくり上がっていく。
『わあーたのしー!なんか出撃!って感じ!』
「・・・」
30秒ぐらいで地上まで台が上がりきった。そこには既に輸送機が一機止まっていた。
『レイヴン。1分13秒遅刻だ。気をつけてくれよ。』
「・・・すまない。」
全然間に合ってなかった。
機体を輸送機の中に搬送すると、輸送機はゆっくりと滑走を始めそのまま大空へと飛び出した。
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