ホーム > 小説ギャラリー > 死神と天使第三章-堕ちゆく世界 第三話-
「・・・」
アークのガレージにあるバニシングドライブを一人見ている。昨日の戦闘でジェネレーターは使い物にならなくなった。
とりあえず今後のことも考えて早々と変えるべきなのだが、残っているのはキサラギのFUDOHのみ。
重量が気になることもあるし、何よりこれ以上換えが効かないことだ。
6年前にキサラギが解体されたことによりキサラギ商品はもちろん製造されなくなった。
今から他のパーツに換えるとなると新たに買わなくてはならない。資金も時間もない。
明日にはまた新しい依頼が入っているのだ。
「・・・仕方ないな」
悩んでいてもこの状況が良くなるわけでもなかったので、仕方なく整備員を呼んだ。
「ジェネレーターをFUDOHに交換・・・あとブースターをB05-GULLにしておいてくれ。」
「分かりました。」
3人の整備員が俺の機体の換装に取り組み始めた。
俺は見ていても仕方ないのであそこに行くことにした。
換装と修理だけなら1日で終わるから、明日の仕事のときに来ればいいと思ったからだ。
俺は違うブロックにある一機のACに乗り込んだ。しかしこれは俺のACではない。アークで共有されている移動用ACだ。
昨日の戦闘の後直接アークに行き、そのままアーク内の仮宿舎で寝たので帰りの足がないのだ。
フリアもそうなのだが朝からずっと姿を見ていない。街が近いのでおそらくそこにでもいるだと勝手に思っている。
ACの外見はほぼ初期パーツだが、俺が頻繁に使うため勝手に換装させてもらった。中身が違うだけでもACはだいぶ変わるものだ。
今日はあの日だ。いつもは車で行ってるが、今日はないのでこれを使うしかない。もちろん移動用のACなので武装は何も装備していない。
カラーリングも初期状態のままだ。電源をつけてシートベルトを付ける。
戦闘でなければパイロットスーツもヘルメットも義務付けられていない。
そのままガレージを発進すると、俺はあの場所に向かった。
−20分後。
俺は町外れにある共同墓地についていた。そこには1000は超えるであろう数の墓石が並べられている。
ここは旧世代兵器により亡くなった人間の共同墓地なのだ。
あの日はまさに悪夢であった。俺が12歳だったときのことだが、今でも昨日のことのように思い出せる。
空を覆いつくす黒い影。壊れていくビル。燃えている家。撃破されていく多数のAC。
空襲が終わったあとも悪夢は続いた。瓦礫により住むとこを無くし、食料もろくに食べれなかった。
だから高収入のAC乗りは時代に求められたのだ。父親がレイヴンだったおかげで俺は食うものにも困らず、軍に入ることができた。
少し歩くと目的の墓石のところに着いた。全部同じ墓石であるが、何度も来ているので覚えたのだ。
墓石には「ジルタス=マクスウェル」と彫られている。それを確認すると、途中買ってきた花を添え静かに手を合わせた。
(・・・あんたが死んだことは未だに信じられない。アリーナで無敵を誇っていたあんたがたったAC一機にやられてしまうとはな。)
「あれ?あんたも来てたの?」
俺が静かに目を開け声のするほうを向くと、そこには礼服を着たフリアがいた。
「意外と義理堅かったりするのかな?」
俺は静かに墓石のほうに向きなおすと、また静かに手を合わせた。
いつもならつっかかってきそうだが、今日ばかりは空気を読んでいたのかそれはなかった。
「この人は誰なの?家族ではないみたいだけど。」
「・・・この人の本名を知っている人間は少ないからな。」
「ってことはレイヴンだったの?」
「・・・名前は・・・ジノーヴィー。」
「え・・・?」
この名前を聞いたフリアは驚いた表情で俺の顔を見る。ジノーヴィー・・・6年前のアリーナ一位。
現在一位のインフィニティに続いて、AC乗りの間で知らない者は少ないとされている。
しかし6年前にあるレイヴンにより撃破されている。そのレイヴンは不明で、インフィニティという噂も流されているが真相は分からない。
「なんでジノーヴィーと知り合いだったの?」
当然の質問であった。そんなトップランカーと俺が知り合いのはずがないからだ。
「・・・ジノーヴィーは親父の親友だったんだ。それでよく演習の相手もしてくれた。」
「へえ〜・・・そのお父さんは?」
「・・・」
「?」
「・・・4年前に死んだ。」
「あ・・・ごめん。」
「・・・いや。」
俺は墓石から目を離すと、水桶を手に持ち出口に向かった。フリアも何も言わずに俺の後ろをついて来た。
水桶を出口付近の元の場所に戻すと、そのままACのところまで歩いた。
「・・・お前はどうやって来たんだ?」
「あれ。」
フリアが指差した方向には一機のACが佇んでいる。初期カラーリングとパーツを見ると、俺と同じようにレンタルの移動用ACらしい。
「・・・そうか。」
俺はそれだけ聞くとACのコクピットに乗り込んだ。そしてコアブロックを閉じようしたときフリアとふと目が合った。
「じゃあまた後でね。」
とにこやかに笑って言ってきた。
「・・・ああ。」
俺はそのままコアブロックを閉じ、電源をつけた。ACを起動させ、静かにその場から去った。
アークの仮宿舎に戻る間、ジノーヴィーのことを思い出していた。
演習中は本気であったが、それ以外の時は、顔に似つかわないぐらいに俺に優しくしてくれた。
歳は父親と変わらないぐらいで30は過ぎていたと思うがよく分からない。
彼は6年前に黙って俺達の目の前から消えていった。
次に会ったのはあの墓標の前。その親父も俺の前から消えた。
そして親父も彼同様次にあったのは墓標の前だ。
何かあるのではないかと当然思ったが、親父の遺言を書いた手紙には
「俺が死んでもそれはレイヴンとして死んだことだ。だから余計な散策は無用だ。俺の死にお前をつき合わせるつもりはない。」と書いてあった。
俺自身いつかはこうなると覚悟していたので、あまりショックではなかった。
しかし俺の心の中には確かに彼らとの思い出が残っていた・・・。
アークのガレージに戻りバニシングドライブのところまで行くと、その横に珍しい機体があるのに気づいた。
重量二脚のACで装備はCR-WBW98LXとNIOHのみ。左腕にはシールドが装備されている。一目で誰のACかは分かった。
“ブラッティマリー”、ACは“リミテッドシリンダー”だ。彼女は現在A−2。つまりランキング2位だ。
一位のインフィニティに匹敵する力を持っていながら一度も彼と対戦したことはない。
対戦は何度も組まれているが彼女が拒否しているのだ。理由は謎だが、インフィニティとできているという噂が有力だ。
「そんなに私のAC珍しい?」
突然後ろから声をかけられたので驚いて振り返った。まったく気配が読めなかった。
そこには背も高く、大人の女性を思わせる気品あふれた女性が立っていた。
「いえ・・・初めて見ますので。」
「そう。さっき対戦が終わったばっかりなのよ。彼、結構しつこくてね。」
彼というのはおそらくA−3のゴーストイーター。何度も何度も挑んでいることはかなり有名だが、勝ったときはない。
それは彼の技量が低いのではなく、1位2位の技量が桁はずれだからだ。
「・・・ブラッティマリーにこんなところでお会いできるとは思ってもみなかったです。」
「マリアでいいわ。長くて呼びづらいでしょ?それにACに乗ってないときぐらいその名を忘れたいわ・・・。」
「・・・」
彼女の目が一瞬悲しそうになったが、また先ほどと同じように戻る。
「あなたカイルでしょ?」
「・・・ええ。よくご存知で。」
「まあ結構有名よ。初めて見るけどまだ若いのね。いくつ?」
「・・・18です。」
「ふーん・・・。今暇?もしよかったら私と少し遊んでかない?」
「・・・いえ、自分は。」
「まあまあ、女性に誘われて無碍に断るなんて女の子に嫌われるわよ?」
「・・・」
「じゃあちょっと付き合ってもらうわよ?ついてきて。」
そういうと彼女はそのままガレージの奥に歩き出した。俺も仕方なくその後ろをつくように歩いていった。
そしてある部屋に入っていった。俺も後から中に入るとそこには沢山のコクピットブロックが設置させていた。
「・・・シミュレータールーム?」
「そそ。期待の新星がどれくらいの力量なのか見るのもトップランカーの役目かなってね。」
そういうと彼女はブロックを開き、中に入った。俺もその対になるブロックに入った。
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