ホーム > 小説ギャラリー > 死神と天使第三章-堕ちゆく世界 第六話-
移動用ACは普通のACと違い、コクピットが二人用だ。しかもその改造に関してはアークが無償で行ってくれるので助かる。
俺が移動用AC“アームレス”のコクピット内に入ると、後ろからフリアも入ってくる。
「前回みたいなことにならなくてすみそうね。」
(・・・まったくだ。)
シートに座りベルトを締める。電源を入れながら時間を確認すると、今は3:26。この機体ならば15分あれば家に着いてしまうだろう。
「・・・出るぞ。」
「はいはーい。」
ブースターペダルを踏み込み、機体が勢いよく格納庫から飛び出す。
「うわ!早!」
「・・・」
現在速度は420km。確かに並のACよりは早いかもしれない。俺自身いつも以上のGがかかると感じている。
「あ、安全運転でね・・・。」
「・・・」
どうやらコイツはスピード恐怖症らしい。
10分ぐらい経っただろうか。周りの風景が土ばかりの大地に変わってきた。
ここらへんはまだ開発が進んでいないので何もない。その奥に俺の家があるのだから、変な人間だと思われてもおかしくない。
「ねえ・・・」
「・・・なんだ?」
ふとフリアが何かに気付いたようだった。
「あれって・・・AC・・・だよね?」
フリアが指指すモニタは右サイドのモニタ。
移動用ACは普通のACと違い、カメラ範囲を広くしてあるので後ろまでモニタできる。
その代わりレーダーが装備されていないので、五分五分といったところだ。
「・・・そのようだな。」
そのACは後ろから真っ直ぐこちらに向かってくる。その速度は凄まじく、こちらよりも速度が出ているようだ。
「なんか嫌な予感がするんだけど・・・攻撃とかしてこないよね?」
「・・・」
ACの襲撃などよくあることだが今こちらはただの移動用AC。
戦闘用にチューンしていないので、戦闘になれば劣勢となることは必死だ。
加えて武器を装備していないため、戦う術がない。
後ろからくるACがドンドン近づいてくるのが見える。
目視ではあるが、機体色は白で肩に追加ブースターが装備されていることが確認できた。
近づいてくる時間を考えると、450以上はでていると思われる。
このままでは約60秒後には接触することになるだろう。戦闘にならないことを祈るだけだった。
40秒は経っただろうか。ずっと右のモニタに集中しながら操縦していたが距離が1000近くまで詰まっている。
と、突然相手ACが右腕のスナイパーライフルを構える。
「ちっ・・・」
すぐさま機体を急ブレーキさせ、右後ろへとブーストジャンプさせる。
「パン!パン!」
乾いた音と共に銃弾が2発放たれるが、既にそこに標的となるこちらの機体はない。
『くそ!雑魚のくせに避けやがって!さっさとやられろ!』
相手のACから声が聞こえる。まだ声から若さを感じる・・・新人かもしれない。
銃弾を避けつつ、こちらも旋回する。いつまでも避け続けるというわけにはいかなそうだからだ。
だが、相手はスナイパーライフルを装備しているというのにドンドン近づいてくる。
確かに左腕にブレードを装備しているようだがこちらの装備がないのであれば遠距離から撃つほうが危険も少なく、
安全に攻撃できると思うのだが。
相手の攻撃は避けているがこのままではラチがあかない。こちらには武器がないのだ。
「・・・どうするか。」
「ねえ・・・これってハンガーだよね?」
フリアが指すメインモニタの右下には、ハンガーに何か入っていることを示している。
「なんか荷物でも入れてるの?」
「・・・いや。」
正直何が入っているのか検討もつかなかったが、フリアが入れた荷物でないことは確からしい。
何なのかはさっぱり分からなかったが、今よりは状況がよくなるかもしれない。
俺は左のスイッチを押して格納内のものを取った。
独特の音とともに格納内のものが装備されることをモニタで確認する。
「CR-WH01HP・・・それにCR-WL69LBか・・・」
ハンドガンの上位型であるCR-WH01HP。
それに通称“初期ブレ”と呼ばれる一番メジャーなブレードCR-WL69LB。
はっきり言えば火力不足なのは目に見えているが何もないよりはマシだった。
何より左腕の格納が同じ武器ではなくブレードだったところを見ると、少なくとも俺のことを知っている人物の仕業のようだ。
「そういえば・・・」
フリアがふと何かを思い出したらしく言葉を漏らした。
「こういうことってミリさんに言っといたほうがいいんじゃないの?」
「・・・」
言われてみて気が付いた。ACとの戦闘であれば、オペレーターに情報をもらうのがかなり有力なはずだ。
何故今まで気付かなかったのか・・・俺のミスか・・・それとも他に何かに集中していて忘れていたのか・・・。
俺は左手でキーボードを持ってくると、アークに回線を繋いだ。
「・・・はい、ミリ=ファルバードです。どうしましたか?」
「ああ・・・実は」
言葉を続けて発しようとするが、前から弾丸が飛んでくる。
機体を一度右に振り、その後ブーストジャンプし弾丸を避ける。
さっきからかなりの弾丸が飛んできていることは確かだが、まだ一発も当たってはない。
「通信変わってくれ・・・」
「はいはーい」
とフリアが身を乗り出し、俺の左上にあったコントールパネルを取り後ろに持っていく。
「えーと・・・フリアです。とりあえず今なんかやばい状況なので連絡をしてます。」
「え?あなたはこの前も・・・一体何故・・・」
「・・・今はそんなことを説明している暇はない。」
「え?あ・・・すみません。」
とオペレーターは少し下を向いてしまうが、今はそんな状況ではないのだ。
「えーと・・・今戦闘中なんです。それで相手が分からないんですけど・・・。」
「え?今日は仕事が入ってないはずなんですが?」
「えーそうなんですけど・・・」
俺はこの会話を聞きながら半分呆れていた。こんなんじゃいつまで経っても何も分かりそうにない。
俺はコンソールパネルのあった場所にある一つのボタンを押して、音量を大きくした。
「現在未確認機と交戦中。こちらはアークのACなので戦力がないに等しい。相手のACの情報等調べてくれ。」
「あ・・・はい。了解しました。」
ようやく状況が理解できたようで、忙しそうにキーボードをたたき始めた。
そういっている間にも相手のACからはスナイバーライフルが撃たれ、何度もこちらの装甲を掠めていく。
その時、相手がスナイパーライフルをパージした。どうやら弾切れのようだ。
全弾撃って直撃が数発というのは、かなりの捕捉性能の低さを伺える。
『な!武器を装備してやがる・・・話を違うぞ!』
今更気付いたらしい・・・しかし話というのはどういうことか。
言えることは、こいつの気まぐれではなくどこかで仕事を頼まれたということだ。
非戦闘時、しかも移動用ACに乗っているときに襲撃とは・・・かなり姑息な手を使う。
スナイパーライフルを捨て若干軽くなった相手の機体が、さきほどよりも速いスピードでこちらに迫ってくる。
相手の機体の左腕から赤い光がはしる。そしてそのまま右肩のほうからその左腕を振りかぶる。
「ちっ・・・」
反射的にブレードを構える。左腕が動き相手のブレードの光をこちらが止めるかたちとなり、光が交差する部分からは火花が上がる。
と、周りからのノイズに紛れるように声が聞こえてきた。
『レイヴン。相手のACの情報が分かりました。現在交戦中のACはE-39のセンターアーツ。
搭乗レイヴンはナーム。数ヶ月前に登録されたレイヴンのようです。』
「・・・相手が受諾した依頼については何か分からないのか?」
『クライアントからの情報は一切情報公開ができないとされているので、そこまでは分かりません・・・。』
「・・・了解。」
相手の意図は見えてこなかったが、相手のレベルが大体分かったのでこれはこれでよしとしよう。
「大丈夫なの?」
頭にあるサブモニタにわずかに映るフリアの顔からは心配の様子を伺える。
「・・・ああ・・・大丈夫だ。」
特に根拠もなかったがこんなことで俺は終わってはいられないのだ。
『実はこれだけじゃねえんだぜぇ!』
と、相手からいきなりの大声が聞こえる。
わざわざ大声叫ばなくてもこちらには聞こえているが、威嚇としてはその声が使い道があるだろう。
と相手ACの右腕が後ろに隠れたかと思うと、次の瞬間にはその手にハンドガンが握られていた。
『格納武器ってすげえよなぁ!実は思わせぶりで武器持ってるんだぜ!』
昔、コアに格納機能が付いたときは確かにそう思ったかもしれないが、今ではEOやOBといった様々なコアタイプがある。
その程度では驚かないのが普通だ。
それにこちらもさきほど同じように格納武器を取り出したところだ。
相手のACが左腕を上げ、ブースタで後退する。それと同時にハンドガンからマズルフラッシュが起こる。
こちらも構えていた左腕を下ろすと、右へ加速しながらハンドガンを構える。
そして敵機を確実にロックオンサイトに収めつつ、静かにトリガーを引く。
二機のACから放たれる銃弾が交差し、互いの目標に向かい飛んでいく。しかし違いは歴然であった。
あちらは機体を後退し続け、こちらを撃ってきている。こちらは左右に機体を振りつつである。
こちらの目立った損傷はなく、相手のACの右腕からは火花が多少落ちてきている。
こちらのハンドガンはリボルバータイプで装弾数は6発である。
相手のハンドガンも6発が装弾数と同じであるが装填時間はこちらのほうが短い。
『くそ!こうなったら近接戦闘だ!』
おそらく射撃の能力はあまり高くないようだと自分でも分かったらしいが、はたして近接戦闘でも俺に勝てるかは疑問が残る。
相手のほうが機動力が上なのでこちらの出方というよりは、あちらの出方に合わせ対処するほうが得策といえる。
相手が近接戦闘をご希望のようなので、俺もその期待に答えたほうがいいだろう。
だが正直なことを言うとこんな戦闘早く終わらせたかった。
自らの意思でもなく、ましては戦う気も戦う準備もしていない状態での対人戦など気が乗らなくて仕方なかった。
「・・・落とす。」
ブースターペダルを一瞬放しすぐにまた踏み込む。すると機体は静かに空中へと浮き上がっていく。
そして空中から未だ地べたを這いずりまわるグレーの機体目掛けて右のトリガーを引く。
銃口から放たれる黒い弾丸は真っ直ぐに目標目掛け飛んでいく。そしてその目標である相手の機体、その頭部へと吸い込まれる。
『何・・・レーダーが!』
銃弾が見事に当たった相手のアンテナ頭からは火花が散り、いたるところから内部機構が見えている。
耳を潰したところで相手の左腕側へと回りこむように着地する。相手の動きはさきほどから止まったままだ。
左腕のブレードを展開すると同時に後ろに回りこむように移動する。
ブレードから発生している光が肩ブースターにわずかに触れる。間一髪入れず、そこにハンドガンを撃ちこむ。
銃弾が装甲を貫通し、内部で爆発を引き起こす。ACを戦闘不能にするには十分な爆発。
『くそ・・・』
爆発の反動で倒れた機体の前から若干の音が聞こえる。おそらく相手のACが目の前に立っているのだろう。
そして、外部マイクがしっかりと拾った金属同士が当たる音。
ハンドガンの銃口がコアへと押し当てられていた。
『・・・どこから依頼された?』
静かな声・・・だがその言葉からは確かな殺気と覇気を感じた。
体中から冷や汗と脂汗が流れ出ているのが自分でも確かに感じることができた。
おそらくこれが恐怖というものなのだと思った。
「・・・さてね・・・」
やっと出た言葉。だがそれは相手に対して挑発的な態度を見せているだけであった。
だがこれは依頼を受けたときに承諾した内容なのだ。“情報については一切他言無用”レイヴンとして当然の掟。
これでも俺もレイヴンの端くれなのだ。自分の意思でレイヴンとなった以上こうなることも覚悟していたはずだ。
『・・・そうか・・・残念だな』
覚悟を決め、目を瞑る。すると不思議と心が落ち着き、頭の中に色々なことが思い浮かぶ。
俺の人生・・・短かったな・・・まだやりたいことが沢山あるというのに・・・
俺は何でレイヴンになったんだっけな・・・そうだ・・・企業を潰すためだ・・・
好き勝手やりつづける企業・・・俺達の邪魔となる企業・・・そのすべてを潰そうと考えたんだったな・・・
いつの間にか目的さえも忘れてただ敵を・・・目の前の敵を撃破してきたな・・・
なんでこんなことを忘れていたのだろうか・・・
もう一度・・・もう一度俺がACを動かすことができたら・・・
死ぬ前というのは時間がゆっくりと流れるとよく聞く。
そのことは本当のようだ。俺は目を瞑ってから物凄く時間が経過したように思えてしまった。
だがまだ時間があるようだ・・・まだ俺の心臓は止まることなく確かな鼓動を刻んでいる。
どれくらいの時が経ったと錯覚してしまったのだろうか。
いつまで経っても視界は真っ暗のままだが、体の感覚を感じることができる。
何故か瞼を恐る恐る開けてみた。このまま暗闇の世界を見続けるよりは少しでも光を見ておきたかった。
瞼を開け、いつのまにか動くようになっていたサブカメラのモニタを見る。
だがそこにはただ何もない殺風景な赤土が広がっているだけであった。
「何・・・!?」
状況がよく分からなかった。俺を殺そうとしていたあの機体の姿はまったく見えない。
いや後ろに回りこんでいるのかもしれない。だが機体はまったく動かないので見ることはできない。
機体の損傷率は96%。ジェネレーターが完全に停止し、わずかな補助電力でカメラを動かしているだけにすぎない。
コアブロックを射出する。
前のモニタが大きくせり上がり、そこから外の空気が入ってくる。
全身に汗を掻いているせいかとても涼しく感じる。
静かに身を起こしコアから体を出す。
まわりには何もなく、ただこの広い大地に一体のACが佇んでいるだけだった。
アームレス
頭部
: CR-H69S
コア : CR-C69U
腕部 : CR-A69S
脚部 : CR-LH69S
ブースタ :
B02-VULTURE
ジェネレータ : G01-LOTUS
ラジエータ : R02-HAZEL2
FCS : CR-F69
インサイド
: NONE
エクステンション : NONE
右肩武器 : NONE
左肩武器 : NONE
右腕武器 :
CR-WH01HP
左腕武器 : CR-WL69LB
右格納 : NONE
左格納 : NONE
ASM CODE :
&L200010000g0004000o00300g00M0004g40000e#
センターアーツ
頭部 :
CR-H95EE
コア : CR-C90U3
腕部 : CR-A80S3
脚部 : LH02-LYNX2
ブースタ :
B03-VULTURE2
ジェネレータ : CR-G91
ラジエータ : R01-HAZEL
FCS : CR-F75D
インサイド :
NONE
エクステンション : NONE
右肩武器 : WB31B-PEGASUS
左肩武器 : WB31B-PEGASUS
右腕武器
: WH02RS-WYRM
左腕武器 : WL14LB-ELF2
右格納 : CR-WH69H
左格納 :
NONE
CR-O69ES
CR-O71EC
KISSYOH
ASM CODE :
&LA00070001w000c000s00500c02M0CPi0oMb003#
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