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アーマード・コアファン

ホーム > 小説ギャラリー > 死神と天使第三章-堕ちゆく世界 第八話-

「はい。確かに確認しましたが・・・戦闘があったって本当だったんですね」
「・・・ああ」
アームレスをアークのガレージにいる整備員に渡す。
目立った外傷はあまりないのだが、一番破損している部分といえばコクピット内の通信用コンソールパネル。
何故これが壊れたのかととやかく聞かれたが、こんなところで話を大きくしても仕方がないので適当に流すことにした。
結局昨日はあの話が永延と続き、終わったときには夜になっていた。
もう遅いと言ったが、ミリはそそくさと家を出て行ったので、
今日はまた昨日と同じようにアームレスでアークのガレージまでやってきたということだ。

「お!カイル!どうやら生きてたんだな。まあ当り前といえば当り前か!」
ふと後ろから声が聞こえる。振り向いた先に立っていた人物は彼であった。
「ええ・・・もしかして“アレ”はあなたが?」
「おお、そうだ!お前も結構な有名人なんだからな。いつ何時何が起こるか分からんからな。」
「・・・確かに助かりましたが・・・それならそうと初めから言ってもらえると・・・」
「そこがビックリどっきりなんだよ!危機的状況から脱するただ一つの光!すなわち“希望”!!」
「・・・はあ・・・」
その返答を聞いて半分諦めていた。この人はこういう人なのだ。
「あーカイルー!」
今度は横から、フリアが近寄ってくる。
「おー!お前も遂に女を見つけたか・・・いやあよかったよかった・・・。
正直こんな無愛想なやつ誰が婿としてとってくれるか心配で心配で・・・」
嘘泣きだと誰にでも分かるが、必死に涙を堪えているような表情で目を腕で隠す。
「・・・誰この人?」
フリアは明らかに不審者を見る目で聞いてくる。
別にこの性格以外であれば他は普通の人間―いや、それ以上の人物なのだが。
「俺か?俺はブリック=ファスター。昔は現役のレイヴンやってたけどよ、今じゃ現役を引退して整備班の頭をしている。
引退したといってもまだ今年41だ。よろしくなお嬢ちゃん。」
「あ・・・整備の人だったんですか。こんな気の軽い人レンヴンなわけないなーとか思ってたんですよ」
「はっはー痛いとこを突くねえ。そういうお嬢ちゃんは何をしてるんだい?」
「私はレイヴンやってますよ〜。今年で2年目!ランキングE−47!」
「へえ〜こんな可愛い娘がレイヴンやってるなんてねえ・・・時代が変わったのか・・・」
「あはは〜冗談が上手なんですねえ」
「・・・おい」
「はっは・・・あ?どうしたカイル?」
「・・・これから仕事があるんだが・・・」
「あっ!そうだった〜。だから私カイル呼びに来たんだっけ」
「なんだそうだったのかよ。まあ安心しな。整備は終わってるしパーツの換装も終了してる。」
「というわけなんで行ってきますね〜」
「・・・まったく」
この二人が同じ場所にいると話が永遠と終わりそうにない。
彼一人でも十分五月蝿かったガレージが余計に騒々しくなりそうだ。


『レイヴン、目標となるクレストの工場施設が近づいてきました・・・』
「・・・了解」
AC内で既に待機しているわけだが、今日は何故か妙にオペレーターがよそよそいい感じがする。
オペレーターとの連帯関係はとても大切である。時としてそれが原因となり撃墜されることもある。
このままでは何かまずいような気がするのだが、俺にはこういうときに気の効いた言葉が思いつかない。
『レイヴン、作戦領域に到着した。ACを投下するぞ』
「・・・了解」
結局何も言わずして作戦が開始されてしまった。作戦中に私語をすれば、それこそ危険因子である。
このことが作戦に支障が出なければいいが・・・
『何してんの〜?先行ってるわよ〜』
既にハッチが開放しており、いつでも投下できる状態になっていた。
それでも行こうとしない俺にフリアが何か思ったのだろう。
既に前に吊るされていた機体“ワイルドファング”は遥か下に見える。
「・・・降下」
俺も信号を送ると、ガチャンという音とともにハンガーが外され、重力に逆らうことなく自由落下を始める。
(今回のミッション・・・今回は・・・)
と昨日見たメールの内容をまた思い出し始めた。

『前回の作戦ではご苦労だったレイヴン。その腕を見越してまた仕事を依頼したい。
今回はポイント軸3012,5493にあるクレストの研究工場施設を調査してもらいたい。
この施設は随分前からその機能を停止しているのだが、
最近となってあの施設に何者かが出入りしているという目撃証言が後を絶たない。
クレストは何も動きを見せていないようだが、この施設は我が社の領域に侵入している。
ここより我が社に対し攻撃が行われるとも限らない。調査中に敵戦力と接触した場合は可能なかぎり撃破してくれ。
寮機についても前回同様と考えてもらって結構だ。
相手のレイヴンには既に話をつけてある。では健闘を祈る』

またミラージュからの依頼だ。そのことはどうでもいいのだが、その寮機というのがまたコイツというのが気になる。
ミラージュのほうから依頼したのか、それともオペレーターが選出したのか・・・。
(・・・オペレーター?)
と地面が近づいてくる。ブースターペダルを踏み込み速度を落とし、地面スレスレで一度止めるとそのままペダルを放す。
機体が僅かに揺れ、脚部が大地に固定される。
(オペレーターが選出したとでもいうのだろうか・・・それで何か感じが違うのか・・・)
『何ボケっとしてんの!?』
その声に慌てて反応し目の前を見ると、正面のモニタいっぱいにワイルドファングの機体が映る。
「ああ・・・すまない」
どうやら考え事をしすぎたようだ。作戦中に他の物事を考えるとは・・・自分のことながらどうしたのだろうか。
『というわけであなた先行ってね〜。レディを守るのは男の役目でしょ』
とワイルドファングが視界から消えたかと思うと、すぐ横に並んで立っていた。
「・・・作戦開始する」
と機体を動かし始める。だが一つおかしな点を見つけた。ロックオンサイトが表示されていない。
いつもロックオンをしていないが距離などをつかむためにサイトは表示している。
これは多少の支障が出るかもしれない。
「オペレーター。FCSに異常発生。ロックオンサイトが表示されない。」
『え・・・』
理由がまったく分からないが、これは報告しておくべきであろう。それこそ作戦の支障が出るものだ。
『レイヴン・・・システムを戦闘モードで起動していますか?』
「何・・・?」
言われて改めてシステム状況を確認する。“SYSTEM NOMALMODE”、おまけに両腕の火器にもセーフティがかかっている。
戦闘モードで作戦を開始するのが当り前なので確認することを忘れていた。
『システム、戦闘モード起動します』
『・・・大丈夫ですかレイヴン?先ほどから意識が集中できていないようですが・・・』
「ああ・・・大丈夫だ。すまない・・・」
『いえ・・・』
どうやら何かおかしいのは彼女ではなく俺のほうのようだ。
今まではこんなことなどなかったのだが・・・何かが・・・俺の中で何かが変わったのだろうか・・・
自問自答してみても、答えを返すべき自分はただ沈黙を保ったままだった。

 

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