ホーム > 小説ギャラリー > 死神と天使第三章-堕ちゆく世界 第九話-
「工場施設に到着・・・。進入を開始する」
『了解しました。周辺に反応はありませんが敵戦力は未知数です。十分に注意してください』
「・・・了解」
こちらのレーダーでも機影は確認されない。
あるのはすぐ横で施設を物珍しそうに眺めている奇妙なACだけだ。
『この施設って今使われていないんでしょ?なのになんで補修とかしてんのここ?』
と右腕に持ったPIXIE2の銃口が示す先にあるのは、まだ錆のない真新しい鉄板が張られている外壁。
それも一部というわけではなく所々にその様子を見てとれる。
「・・・何者かがしたのであろう・・・それを調べるのが今回の任務だ・・・」
『はいはい。そういえばそうでしたね』
途端に銃口を下ろすとゆっくりと後退し、俺の後ろへとついた。
何が不満だったのかは分からないがこのままではまったく仕事が進まないと判断した俺は、目の前にあるゲートのロックを解除した。
本来であれば機能を停止した工場であれば電気も来ていないのだからゲートが動作するわけがないのだが、
それが動くということはやはり何かがあるのだろう。
ゲートが開いた先にあったのは、ただの無機質なだだっ広い通路が広がっているだけだ。
その通路の幅もACの幅の2倍ぐらいのスペースしかないので、戦闘となると厄介なことになりそうだ。
「進入開始・・・」
ゆっくりとレバーを押し、機体がそれに連動してゆっくりと前進を始める。
「格納庫B−3異常なし。続いてC−1へ移動する」
『それにしても何もないみたいだねえ・・・』
既に7箇所の格納庫を調査したわけだが怪しいものがあるどころか、敵戦力、ましてやネズミの一匹もいる気配がない。
もちろんACのレーダーでネズミを捕らえることなど不可能だが。
あと残っているのは次のC−1格納庫を含め、あと15。いつまでこんなことが続くのかと思うと気が抜けてしまう。
だが最後の最後まで何が起きるかは分からない。
結局は最後の最後までくまなく格納庫内を調査するしかない。
レーダーにも依然、何も反応がないのだから仕方がない。
「格納庫C−1前の扉に到着。引き続き調査を続行する。」
格納庫の扉の横あるオートロックをOSの自動解除に任せ、数秒で扉を開放する。
ゆっくりと開く期待もされていないブラックボックスの一つがまた、その中身を俺たちの前に悠然とさらし出す。
電気が通っている格納庫にはわずかな光が灯され、わずかにその“中身”の形を映し出している。
右腕に構えられたリニアライフルを前に出しながらその中身へと進んでいく。
『レーダーには何にも反応なしね・・・そっちも相変わらず?』
「・・・ああ」
格納庫内は装甲車が30台は入れるほどの面積。狭くはないが戦闘を行うには少々きついといった感じだ。
室内は中途半端な光が灯っておりそのままでは少々暗いが、暗視スコープを起動すると光が入りすぎる。
結局のところそのわずかな光に頼り、辺りの調査を行わなくてはならない。
ACのレーダーは熱探知ではなく電波探知。
つまり周囲の熱状態を感知するのではなく電波を飛ばしその反射によって障害物がどこにあるかを感知する。
それがどれほどの周期で行われるかというのがスキャン間隔というものだ。
メインカメラがACでいう“目”であるならば、レーダーが“耳”といったところであろう。
「・・・やっぱり何もないみたい・・・」
「・・・そうでもないらしい」
「え?」
レーダーで見えないもの・・・だがカメラでは見える。そこにある厚い鋼鉄の床。何もないようであるが“何か”がある。
その部分―不自然な部分というべきであろうか。明らかに辺りとは違うその“部分”。
左腕から蒼い光が伸び、そのままその“部分”へと突き立てる。分厚い鋼鉄の床だったはずだが、それは一瞬にして融解し大きな穴を開ける。
「・・・どうやらブラックボックスの中身は複雑なようだな・・・」
「中に入れる・・・みたいだね・・・っていうよりACが通るための穴みたいな・・・」
肩レーダーが当たらないように慎重にブースターを吹かすと、真っ直ぐに機体が下に落ちていく感覚に襲われる。
自由落下に逆らわずに落ちていく機体がそのスピードを徐々に加速していく。
カメラをずっと下に向けているがその先は暗闇が広がっている。
レーダーを見てみても何も反応がないので敵勢力がいるとも判断できない。
途端に辺りが開けた。
依然回りは暗いままだが暗さの濃度からして、先ほどの通路より広い場所に出たようだ
リニアライフルの弾を一発。下に向け撃ってみる。
―バン。
発射された弾頭は、弾薬により少し辺りを照らしながらみるみるうちに暗黒の中に消えていく。
そしてそこで小さな爆発を上げた。
「・・・どうやらやっと地面につけるみたいだ」
『えー・・・あとどれくらい?』
「・・・200mといったところだ」
もう一度操縦桿を握りなおしカウントを始めていく。
レーダーのスキャンによって徐々に辺りの様子が現になっていく。
「5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・ブースト」
『え!?』
俺がブースターを吹かしたのを見てすぐに、いつの間にか後ろにいたフリアも同様にブースターを吹かした。
徐々にスピードが落ちていく機体と共に、急速に接近するその終点。
脚部が地面とスレスレのところで止まり、そのままブースターペダルを放すと僅かな振動を伝え着地した。
そして遅れてワイルドファングが着地する。
『地面なら地面って言ってよ!』
「・・・さっき言っただろう」
『こっちは目視できない状態なんだよ!?タイミングぐらい教えてよ!』
「だからさっき言っただろう!」
だがそんなことを言っているような状態ではなかった。
『待って下さい!熱源体発見!数1、ACだと思われます』
「・・・おしゃべりは終わりだ」
『・・・むー』
今一度操縦桿を握りなおし、敵襲に備える。
だがメインカメラは依然そこにある暗黒しか映し出さない。
レーダーには敵機を示す赤い点が10時の方向に見てとれる。
距離にすると500あまり。だが接近してくる様子はない。
『様子見ってこと・・・?』
「・・・さあな・・・だが敵機はこちらを補足しているとは限らない」
レーダーのスキャンによるとここは巨大なドーム状の形をしている。その大きさ1000あまり。
戦闘をするためにあるような場所だ。
『敵機接近してきます!気をつけてください』
「・・・戦闘開始だ」
『りょーかい!』
漆黒の闇に中に僅かな光が二つ。
物凄く弱く、消えそうな光。
だが二つの光は、まさに今確実に“堕ちている世界”にあるわずかな希望に光のようにも思えた。
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