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ホーム > 小説ギャラリー > 死神と天使第四章-混沌の序章 第一話-

「敵機9時方向に回ったぞ!」
『旋回間に合わないー!』
敵機の姿は視認することはできない。
だが確実にそのスピードを上げ、こちらに接近してきている。
その時、巨大な弾頭が目の前を左から右へと通過していくのが見えた。
おそらく敵機から発砲されたであろう“それ”は、そのままのスピードで地面へと激突した。
瞬間、目の前に凄まじい閃光と共に爆発が起きた。
爆風から逃れるべく移動するが時、既に遅し。右側の装甲が焼かれる衝動が伝わる。
そして揺れる機体の中でメインカメラに映ったもの―それはただ黒い影のように見えた。
爆炎によりわずかに見えるその姿・・・それは確かに2脚型のACであった。
「・・・敵機補足。オペレーター、解析してくれ。それとフリアにも同じデータを」
『了解しました』
情報の伝達は一瞬で行われる。戦場とは情報があるかないかでその勝敗が決まると言っても過言でない。
『何コレ・・・?真っ黒な機体に真っ黒な装備?趣味の悪いことで・・・』
暗闇の中の漆黒のAC。つまりそれはこちらの視認を拒んでいることを意味していた。
「張られていたか・・・もしくはここのための・・・?」
その時、視界の左にマズルフラッシュが見えた。
後退をしながら左旋回をし、迎撃に努めようとするがまた光が消えてしまう。
これでは相手の弾があってもなくてもこちらから一向に攻撃ができない。
相手の弾があれば攻撃される。なければロックに頼るものがなく攻撃できない。
少なくとも今の状態ではあるわけだが、状況が悪すぎる。
ましてここまで暗いと距離感というものがまったくなくなる。
完全にまな板の上の鯛だ。
おまけにレーダーは先ほどの落下時から不調気味だ。
どこかに擦ってしまったのかもしれない。
『どうするのこれー!?』
さっきからわたわたと回りながらマシンガンを撃っているフリアだが一向に目標に当たる気配はない。
何か目標となるものがなければ攻撃も防御もできない・・・何か打開策を考えなくては・・・
『敵機接近してます!レイヴン!』
「何・・・!」
次の瞬間、赤い光が視界の右側に走ったかと思うと、身体に衝撃が伝わってきた。
「く・・・」
すかさず左腕のMOON LIGHTを起動させ、右旋回をしながら突きたてる。
しかしその先には手ごたえもなく空を切るだけとなった。
『大丈夫ですか!?』
「・・・ああ・・・右側エクステンション、S2小破・・・威力は大したことないようだ」
『そうですか・・・』
いちいち表情を変えられるとこちらも気になってしまって仕方ないのだが。
「・・・そっちは大丈夫か?」
『ぜんぜーん。むしろさっきから全然攻撃されてないしー』
「攻撃されてない・・・?」
『全然』
つまり最初から俺だけを狙っているということか。何か裏があるのか、それとも偶然か・・・。
少なくとも俺だけが狙われているのであればまだ被害は少なくて済みそうだ。
『前方攻撃です!』
右方向へ避けながら牽制に一発ライフルを撃つ。
もちろん当たることなく弾丸は闇へと消えていった。
「マズルフラッシュ・・・そうか・・・」
光・・・相手の光を頼りにすればいいのか。何故思い付かなかったのか・・・。
「オペレーター。至急プログラムを組んでくれ。流石にこちらでは手が付けられん」
『・・・どのようなプログラムでしょうか?』
「メインカメラ内に映る発光物との距離と位置を計測、音声とレーダー上の表示で出力してくれ」
『・・・・・・了解しました。多少時間が掛かると思いますのでそれまで・・・頑張ってください』
作業的なオペレーターが言うことではないが、今はそれで安心できる気がした。
「・・・了解」
その瞬間、通信回線のモニタが消えた。
作業に入ったのでこちらからは何を言っても聞こえないだろう。
「作業が終了するまで下手なことはするな。回避に集中しろ」
『はいはーい。と言っても私には攻撃してこないけどねー』
彼女は各分野でも活躍できるほどの才能の持ち主だと聞いたことがある。
俺の勘からすれば、彼女ならできると思った。

「・・・動くぞ」
『りょーかーい』
「ポイント軸・・・124,93。バックウエポンパージ。後で回収する」
『踏まないようにしないとね〜』
まだ2回しか使ってない高価なパーツをここで手放す気はない。
回収できれば一番だがこの状況でどれだけのことができるかどうか。
その時、機体に僅かな振動が伝わった。
QUEENのレーダー範囲ではギリギリの位置にある赤い点―4時方向。
回り込まれている。
軽くなった機体を振り向かせ迎撃体勢を取る。
だがその光はまた暗黒の中へ消えていく。
ブレードで斬撃するために一直線に近づいてきたとすれば、レーダー範囲270のスキャン間隔が49。
つまり0.49秒で一回スキャンされるのだからその移動距離を見れば相手の移動速度が分かるはず。
そう考えた俺は一度後退することをやめた。
そして奴が近づいてくるのをしばらく待った。

すると赤い点がレーダーに映る。
「6時方向−真後ろか・・・距離2,218。」
次の瞬間、映ったのは半分以上も近づいた赤い点が表示された。
「・・・1,155・・・!」
全開に右へレバーを倒す。
だが機体左方に衝撃が走る。
「く・・・左腕部損傷率24%・・・だが速度は約・・・450オーバーか」
左方向へ旋回しリニアライフルを撃つ。
まっすぐに移動していた敵機の後ろから弾丸が当たる。
これが敵機に当てた最初の攻撃となったわけだ。
『あ、当たったねえ〜なんかコツとかあるの?』
「・・・分からん。だが相手の行動パターンを見る限りでは敵機はAIの可能性が高い。
こちらしか攻撃してこないところも見ると、機体認識が限定されているのかもしれん」
距離が離れたら射撃。距離を詰めたらブレード。単調な行動パターンではある。
それにこちらとの位置取りが正確すぎる。有効射程のギリギリを維持し続けている。
『ふ〜ん・・・まあ対人戦よりは楽になりそうだね』
「そうとも言い切れん・・・現にこういう状態だ」
『・・・確かに』
『お待たせしましたレイヴン、一応完成しましたが動作確認はまだしていません』
「十分だ。転送してくれ」
『了解』
プログラムが送られてくる。自己解凍・展開が始まりシステムにインストールされていく。
『システム癒着』
合成音声のガイド後、モニタ上にグリットが表示される。レーダーには特に変化はないように見える。
「まずは敵機発見・・・8時方向」
旋回し敵機をレーダー上では正面に捕らえる。するとモニタ上で敵機のブースターによる発光が認識される。
「541,739,025・・・正常に稼動中。流石だ」
『いえ・・・』
『む〜!それでそれをどうするつもりなのー!?』
「・・・さあな・・・ん?これは・・・」
『どうしましたかレイヴン?』
「これは出力をプロットするようにされているのか?」
『え・・・あ、すみません。更新時にデータを初期化させるのを忘れてしまいました』
「いや・・・もしかしたらこれで敵機の行動パターンが分かるかもしれん。助かる」
『いえ・・・』
『む〜!それでそれを一体全体どうするのさー!?』
「さあな・・・回避行動」
前方から接近してくる敵機を表示により確認しリニアライフルを撃ち込む。
敵機はその弾丸をまったく避ける様子もなくまっすぐこちらに突っ込んでくる。
こちらは敵機のマシンガンを右方向へ避けつつ斬撃の機会を伺う。
だがある程度接近すると後退していく。どうも行動がおかしい。
「・・・別の行動パターン・・・?」
レーダー上だけでなく敵機がモニタ上である程度補足が可能になったので、そのまま追撃をする。
こちらの速度は453km・・・ほぼ互角だ。
敵機のプロットの表示は弧を描くように動いていることが分かる。
302,276,025・・・252,196,020・・・
「・・・!このまま行くと・・・」
167,118,020・・・
と、途端に敵機の反応が小さくなりブースター反応がなくなる。
「まさか・・・」
『どうかしたの?』

反応が消えたポイント111,84,020に到着する。
すると僅かに光る小さな光を見つける。
そこには敵機であろうACのカメラアイが青く光っていた。
だがそのACは脚部がほとんど吹っ飛んでおり、立つことすらできないようだ。
その時、敵機の右腕が動きこちらへと銃口を向けた。

―バン

乾いた音と共に発射されたその弾丸は、その青いカメラアイを捉えていた。


『結局何だったの?』
「・・・さてな」
俺はMOONLIGHTを発動させる。
有人ではないとほぼ確信していたので躊躇することなく、敵機のコクピットブロックに突き刺す。
すると爆発は起こらずに静かにその活動を停止した。

だがその時だった。
それまで僅かな光しか灯っていなかったドーム内が、一瞬にしてライトアップされる。
そして、そこにあった一つの黒い扉が徐々に開いていった。
『・・・どういうこと?』
「・・・こういう仕掛けだったということだろう」

不気味に開きつつある扉の向こう。
そこには確実に俺たちが探していた“何か”があると確信できるには、十分すぎるほど不気味であった。

 

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