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ホーム > 小説ギャラリー > 死神と天使第四章-混沌の序章 第ニ話-

徐々に開きつつある扉の向こうには更に通路が続いているようで、どこまでもライトで照らされている。
『・・・これってやっぱり行くべき?』
「・・・気乗りはしないがな」
静かにブースターを吹かし、その扉への前へと着く。
「進行開始・・・」
二つの光はゆっくりとその光の中へと消えていった。


しばらく進むとまた、一つの扉が立ち塞がった。
だがこの扉には何も仕掛けがない。
右腕から伸びたマニピュレーターとOSにより簡単に解除できるほどのロック。
おそらく先ほどのACが最初で最後の砦だったということであろう。
また扉がゆっくりと開いていく。
先ほどよりもゆっくりと開いているように見えるのはただの気のせいか、
それだけその扉から重圧的なオーラが漂っているのかは判断できなかった。
わずかに開いた扉の先には何か大型のコントロール機器か、エネルギー機器があるように見える。
『もしかしてACの培養施設とかって』
『培養とは主として微生物を人工的に育てることです。それにACは機械ですので・・・』
『あーごめんなさい』
彼女の知識量の前にはフリアのボケさえも霞んで見える。

数分掛かってしまったかもしれない。
ようやくその扉の中身を俺たちの前に現す気になったらしい。
そこには複数のコントロール機器と、それらに囲まれるようにして設置されている一つの大きな“箱”
『黒い箱だからブラックボックス・・・?センスないね』
『本来ブラックボックスというのは・・・』
『いやいいって!』
だがその時だった。
『ヴーヴーヴーヴー』
二人の会話を遮るようにドーム内にサイレンが鳴り響き、周囲の警報ランプは赤い光を発している。
『ちょ・・・何もしてないじゃん!』
「・・・喋りすぎだ」
『流石にそれはないかと思うのですが・・・』
そんな冗談を言っている暇などはなかった。
“ブラックボックス”が静かに上下に開いていく。
その中から見えたのは流線的なフォルムと直線的なフォルムの両方を掛け合わせた、
紛れもなく一体の灰色の“AC”の姿であった。
そしてその頭部にあるカメラアイ―左右に一つずつあるそれはまさに“目”のように見える。
その目に光がこもる。狂気の“赤”という色が。
『あちらさんはすっかりやる気?』
「・・・」
意識を集中させ、そのACの一挙一動に注意をする。
俺の勘がささやく。

―このACは違う―

いや、ここまでの演出をされて普通だと思う人間のほうが少ないはずだ。
“それ”が動き出す。そのスリムなボディからは簡単に予測できた
―いやそれ以上の速度で“それ”はこちらに突っ込んでくる。
「回避運動・・・」
言うが早いか体が動き出す。
リニアライフルのロックを外すことなく右へ平行移動し、そのトリガーを引いた。
目標に向かった弾丸に臆することなく突っ込んでくるAC。
だがその弾丸は目標と衝突するであろう、その前に消滅した。
「何・・・!」
『またこのパターン!?』
そのACは真っ直ぐこちらに突っ込んでくる。その姿はまさに、恐怖が迫ってくるようだった。

機体に激しい衝撃が走る。一瞬息が詰まる。
姿勢制御を失った機体は激しい轟音と共に、そのまま冷たい床へと叩きつけられた。
反射的にリニアライフルを構える―いや正確にいえば構えようとした。
再び衝撃が走る。モニタには仁王立ちする“それ”とLost armR armLの文字。
恐らく両腕部の間接を踏み潰されてしまったのだろう。
そしてその両腕部からは不気味な赤い光が伸びている。
赤い光がコクピット―俺へと向けられる。
『ハ・・・ハ・・・ジョ・・・イジョ・・・』
ゆっくりと引きあがった腕が、コクピットに突きつけられる。

『カ―』
『−−−−−−−−−』

時間が止まったのか。
いや確かに動かなくなった。
赤い光は俺を貫いてはいなかった。
そのACの動きがぎこちなくなっていく。

『ハ・・・イ・・・ハ・・・ハ・・・ネ・・・』
“それ”はそれだけ言い残すと激しい爆音と共に目の前から消えた。
まるで何かから逃がれるように。


『大丈夫!?』
「・・・生きていることは確かだ・・・」
背中に多少の痛みが残っているが、無傷でないことが奇跡ようのだ。
実際“アレは”確実に俺を殺そうとしていたし、十分に可能だったはずだ。
だがしなかった。
理由が見つからない。
確かアレが攻撃する前に何か聞こえたような気がする。
ものすごく大きく、甲高い音が。
『レイヴン大丈夫ですか!?』
「・・・ああ・・・さっき言ったとおりだ」
『そうですか・・・今現在作戦区域内は危険ではないものの何が起こるかわかりません。地上までの上昇は可能ですか?』
「分からんな・・・この施設の構造的にはどこかを破壊するしかないようだ」
『適当にあの機械とか破壊してみる?』
ワイルドファングのPIXIE2が指す先にあるものは先ほどのACへ何かを供給をしていたようにも見えるもの。
『クライアントからの通信です。施設内の設備は現状維持。レイヴンは早急に作戦領域から離脱されたし』
「・・・だそうだ」
『むー。他に何か言ってくれてもいいじゃないのー。むしろそっちは動くの〜?』
俺もさきほどから操作をしているのだがACが立ち上がれる気配はない。
流石に両腕がない状態で体を起こすというのは難しいだろう。
人間でもバランスを崩してもおかしくないというのにそれを機械にやらせようとするのだ。
「・・・自立は難しいようだ。ブースターで起こすしかないか」
ブースターをフルスロットルで吹かす。だがいつもより出力が低い。
転倒した際にブースターへの衝撃が強すぎたのかもしれない。調子は最悪なようだ。

やっとのことで機体が立ち上がる。だが両腕がない分移動には困難を極めそうだ。
『帰還用の輸送機を手配しました。マップ上で脱出ポイントを表示しましたのでそこまで頑張ってください』
「・・・了解」
『りょーかーい・・・って脱出ポイント結構離れてるね。さっきのドームの場所?』
『すみません。先ほどのドームの裏に作業用エレベーターが設置してあったため、そこからしか回収ができないのです』
『え?いや別に誤られても困るんですけどね・・・』
何か微妙な空気が流れる。ただ敬語で言っただけのことであるが心の行き違いというのはよく起こることだ。
互いの心の中など覗けるわけがないのだから。それは人間であるが故、心を持つ者が故ということだろう。
『で!機体のほうはどうなの?』
彼女もその空気を読んだのか突然話題を変えてくる。だがこういうことも必要だ。
「ああ・・・先ほどの場所までならおそらく移動は可能だ」
『だったらもう行きますか!どうせ10分ぐらいで来るでしょ?』
「・・・ああ・・・頼みたいことがある」
『何よ改まって?』
「・・・俺の機体の腕部を回収してくれないか」
『腕?・・・アレって確かミラージュの中量腕部じゃ一番高いんだっけ?
でもあの様子じゃ間接モーター全部とっかえじゃない?』
「・・・別にそれはいい・・・左腕だけでも構わん」
『左?・・・ああ・・・月光ってこと?まあいいけど・・・』
「・・・すまんな」
「え?まあ・・・あははは・・・」
何かよく分からないが乾いた笑いをするフリア。だがすぐに機体が動き出し、またこちらに戻ってくる。
その左腕には“俺の機体の左腕”が持たれていた。

 

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