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アーマード・コアファン

ホーム  > 小説ギャラリー > 「十字架の天使」 > 第一話「Request」

『紅い雨』と呼ばれた特攻兵器の襲来から2週間後、かつての力を失った3大企業「ミラージュ」「クレスト」「キサラギ」は、「アライアンス」と呼ばれる組織の設立をした。生き残ったレイヴンと呼ばれた傭兵達は統括組織「レイヴンズアーク」の消滅により行き場を失い、彼らはアライアンスに属したか、アライアンスに反抗して、自ら武装勢力を率いてアライアンスと衝突し始め、争いは未だに絶えなかった。
しかし、アライアンス設立から半年後。死亡したと思われていたかつてのアークの主宰者、ジャック・O率いる武装組織「バーテックス」の登場により事態はさらに悪化していくのであった。

ファーネルドシティ。かつてはミラージュ社管轄下の都市の中では、2番目に大きな規模を誇っていた都市であったが、特攻兵器の襲来により、壊滅をしてしまった。現在は、住むところを失ってしまった人々が寄り添って暮らすひとつの避難場所である。

そこへ一台の車が入ってきた。車は、町はずれにある廃墟と化したビルの横で止まった。
車からは、30代後半と思われる男が降りてきた。男はサングラスをつけ、軍服を着て、胸にはAを象った青いエンブレムに、大佐を示す襟章と肩章をつけている。
すると、それを待っていたかのようにもう一台車が、男が乗ってきた車の隣にピタリと着いた。もう一台の車からは、まだ20代前半と思われる金髪の男が降りてきた。軍服の男とは正反対に、Tシャツの上にジャケット、Gパンとかなりラフな格好だ。手には、書類袋を持っている。

「19時30分。予定よりも1時間も遅れちゃったけど、どうしたんだい?ティンバー大佐」

金髪の男は少しおどけた口調でティンバーと呼ばれた男に言った。

「すまない。戦術部隊との合同演習が少し長引いた」

「ああ、だからこんなにきちんとした格好で来たのか。愛人とのデートが長引いたかと思っちゃったよ♪」

相変わらずおどけた口調で話している。

「つまらんジョークだな、クリフ・オーランド。約束通り持ってきてくれたのだろうな?」

クリフと呼ばれた男とは逆にティンバーは硬い表情で彼を睨みつけて言った。おそらく、そういった冗談が通じない生真面目な性格なのだろう。

「少しは何かリアクションしろよ、ほんとお堅いな。ほら、これがバーテックスが近日中に行おうとしている作戦計画書だ。今回は、ホントやばかったぜ。でも、どれも信憑性はとても高い情報ばかりだ、保証する。あと、最近噂になっている『ジナイーダ』というレイヴンの戦闘画面も入手した。これはおまけ」

そう言うとクリフは手に持っていた書類袋をティンバーに手渡した。

「ほう、これほどの情報をこの短期間で…。しかも、私の要求以上のものまで入手してくるとはな、さすがだ。追加で10000C出しておこう」

ティンバーは袋の中に入っていた5、6枚の書類を目に通しながら言った。

「サンキュー♪じゃ、俺はこの辺で失礼するぜ。金はいつもの口座によろしく♪」

そういうと、クリフは自分の車に戻ろうとしたが、ティンバーは「待て」と彼を呼び止めた。

「ん?なんだい、ティンバー大佐」

「もう一つ、調査の依頼をお願いしてもいいか?」

「何の調査?」

「あるレイヴンの調査だ」

「『ジナイーダ』かい?」

「いや、『ジナイーダ』は他のリサーチャーに任せておこうと思う。君が調べてほしいのはこの機体を駆るレイヴンだ」

そう言うとティンバーは車に乗っていた部下に一枚の光ディスクと携帯式の端末装置を出させた。

「これを見てほしい」

端末装置のディスプレーにはどこかの街の風景が映されていた。

「画面に映っているのは、我々が補給用の施設として使っている街だ。これは、この街の街頭カメラの映像だ。もうすぐ、このカメラにはある戦闘が記録された」

画面の右端から4脚型のACがMT2機を連れて映り込んできた。

「これは、我々本部部隊の隊員の機体だ。この後問題のACが登場する。よく見ておけ」

そのとき、クリフは、信じられない光景を目にする。

4脚型のACとMTは画面中央に向かって両腕に装備したマシンガンを撃ち続けているが、次の瞬間、画面中央から青い閃光が2つ飛んできた。一瞬のうちにACの隣にいたMT2機が爆発、炎上した。その閃光が飛んできた方向から猛スピードでACが飛んできた。機体は2脚型で、右手には大きなライフルを持っていた。

4脚型のACは爆発に動揺したのか、少しずつ後退しながら、マシンガンを打ち続けていた。しかし、2脚型ACはそれを簡単に回避すると、右手に持ったライフルを構えた、ライフルからは再び青い閃光が2つ放たれ、その閃光は4脚型ACの頭と右腕に直撃しACは後方に吹き飛ばされた。

その後、2脚型ACは猛スピードで接近し、左腕を振り上げた。左腕からは青白い光が伸びてきた、その光は、4脚型ACの胴体を貫き、青い光に包まれたかと思うと、次の瞬間にはACは爆発し、霧散していった。一方、2脚型のACは、爆発を見届けたあと、再び画面中央の方へ、吸い込まれていくかのように飛び去っていった。

クリフは呆然としながら、ディスプレーを食い入るようにみている自分にようやく気づいた。

「圧倒的じゃねぇか…。しかも、35秒で全滅か。使っている武器はWH04HL-KRSWにWL-MOONLIGHTだけか。あの2つをうまく使いこなしているんだ、とんでもねえ腕をもっていやがる」

戦況を分析しようとしても、この圧倒的な戦いぶりからは単純な感想しかでてこない。

「現在までに、我々アライアンス本部、戦術部隊合わせて5人のレイヴンが奴にやられている。その内の一人はあのMxS7HGSだ…」

「マジかよ?!かつてのアークのトップ、ジノーヴィーと同等の実力を持っていたと言われるあいつを倒しちまうなんて、ほんとヤベーだろ…」

「そうだ、我々だけでなく、バーテックスにも同様の被害が出ていると聞く。少し嬉しい気もするが、やはり危険だ。我々の間では、機体につけられたエンブレムにちなんで、『十字架の天使』と呼んでいる。そして君にはこの『十字架の天使』について調べて欲しい。報酬は100000C。どうだ、やってくれるか?」

クリフはしばらく考えた後、顔を上げた。

「100000Cなら断れねぇな、いいぜ、やってやるよ。ついでに、そのディスクを貸してくれ。手かがりは少しでも多い方がいいからな」

「いいだろう。では、吉報を期待する」

「まかせときな」

ティンバーを乗せた車が去った後、クリフは空を見上げた。

「でけぇ事が起きそうだな…」

そう呟くと彼は車に乗り込み、ファーネルドシティを後にした。

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