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アーマード・コアファン

ホーム  > 小説ギャラリー > 「十字架の天使」 > 第三話「Visitor」

ディープフォレスト基地。その名の通り、深く生い茂った森の中を人工的に切り開いて作られた、アライアンスの基地である。

基地の少しはずれたところにある、小高い丘の上に一機、MTが立っていた。

ミラージュ製のMT、MT08-OSTRICHであるが、本来、頭頂部に備え付けているはずのライフルが無く、代わりに大型のカメラが付いている。

「3時43分か、奴らが来るのは、予定だと後、15、6分ぐらいてとこかな」

MTのコクピットの中でクリフは固いシートに寄りかかりながらビーフジャーキーをかじっていた。

「ま、そんな事より、ちゃんと『アイツ』が来てくれれば、ジャック・Oだろうが誰が来ても構わないけどな」

ティンバーから「十字架の天使」の調査依頼を受けてから1週間。ずっとそのレイヴンについて調べてきたが、肝心のレイヴンの情報はあまりにも少なすぎて進展がほとんど無かった。

ただ、分かっているのは、活動時期は、恐らくアライアンス設立直後からで、アライアンス、バーテックス、他の武装勢力関係なく襲いかかってくる。
また、ACなどを用いた規模の大きい戦闘には必ずと言っていい程乱入してきて、双方の戦力を完膚無きまで叩きのめして去ってゆく。同じようなことをしている「リム・ファイヤー」や、最近噂になっている「ジナイーダ」とは関係は薄いだろう。

そして、単独でレイヴンを12人葬っている。その内、アライアンス側は5人、バーテックス側は3人、他の勢力のレイヴンは4人。大半は特攻兵器襲来後、成り行きでACに乗っている「にわかレイヴン」だが、この半年の間でたった一人でこれ程の数は異常だ。
その内の4人はかつてのレイヴンズアークでもトップ10に入る実力を持ったレイヴン、「TATARA」、「セレスチャル卿」、「Dr.?」。これだけでもすごいのに、あの「MxS7HGS」までもがあのレイヴンによって倒されているのだ。

「これ程の戦果を出しながら、正体を一考に掴めなかったが。今日でその化けの皮を剥いでやるよ。『十字架の天使』さんよ!」

彼がこのディープフォレスト基地に来たのは他でもない、「十字架の天使」の正体を掴むためだ。

だが、適当にこの基地を選んだ訳ではない。以前、クリフがティンバーに売り渡したバーテックスの作戦実行書の中には、このディープフォレスト基地への襲撃作戦が記載されていた。その襲撃作戦がまさに、今日行われるのであった。

当然、クリフの情報は、アライアンス本部部隊に伝わっていて、ディープフォレスト基地にも、ACを配備させたりと兵力を増加させている。バーテックス側もこの基地の重要さをよく知っており、この作戦に何機かACを投入するということもクリフは調査済みである。

「ACを投入すれば、かなり大規模な戦闘も予測される。そうなれば、奴も乱入してくるはずだ。まさか、あの情報がこんな形で役に立つとは…俺も運がいいな」

そう言いながら、空になったビーフジャーキーの入っていた袋をシートの下に押し込んだ。

「しかし…」

モニターからは基地の内部が映されている。そこには、何台もの装甲車や、MT、そして慌ただしく動き回っている兵士の姿が確認できた。

画面の奥からはACが二機、格納庫から出てくる様子も映し出されていた。だが、機体はアークが新人レイヴンに与える「初期型」と呼ばれる機体だった。武器の方はワンランク上のものを装備してあるが、動きにどこか、ぎこちなさがうかがえる。

「ハハッ、大丈夫かよ。そんな機体でなんとかなる程向こうは甘くないぜ〜て、早速おいでなさったか!」

モニターの上部にあるレーダーは、クリフの方から見て右の方角に赤い点が9つ標されていた。同時に、モニターからはMTや、さっきまで慌ただしく動いていた兵士らが点の示された方角の方へ武器を構え始めているのが映し出されている。

「いよいよ始まるか。あとは、『天使』様が来るのを祈るだけか…」

森のあちこちからは火柱が立ち、静かなる深い森は、瞬く間に戦場と化した。


ディープフォレスト基地から飛び出てきたACは目の前から飛んでくる3機のヘリに向かって、右手に装備したアサルトライフルを発砲した。しかし、ヘリはそれを避けると、機体側面に備え付けてあるロケットを発射した。ロケットはACに当たることなく、地面へ激突し、小さな爆発を起こした。

一方、5機のMTが基地に向かって森の中を駆け抜けていく。すると、木々の間から、大きな火球が飛んできて、1機のMTに直撃する。火球は周りの草木に巧妙にカモフラージュされた砲台から放たれたものだろう。MTは、メインエンジンをやられたのか、大きな爆発を起こし、辺りの草木を焼き払っていく。残ったMTは、それをかいくぐり、依然として基地へ前進していく。

すると、バーテックスの部隊が侵攻してきた方角と正反対の方角から一機の輸送ヘリがACを2体吊り下げて、基地の真上まで進入してきた。
ヘリはACを投下させると、そのまま戦闘領域から去っていった。ACはフロート型と重量2脚型で、フロート型は両腕にマシンガン、肩にはミサイルと、レーダーを装備している。もう一方の機体は、右腕にバズーカ、左腕にはシールド、両肩にはミサイルを装備している。2機は、基地に残っていたACとMT部隊と戦闘を始めた。


「こいつら、下手だな〜。俺が戦った方がいいんじゃねぇの?」

あくびをしながら、クリフはモニターを眺めながら呟いていた。戦闘が始まって、30分以上が経っているが、未だに目的の「十字架の天使」は現れない。

普段は30分なんて短いものだと思っているが、この日のクリフは違った。

早く来い!という焦りと、もう来ないのでは?という諦めの気持ちが混ざり、加えてモニター越しに映されている戦闘のグタグタぶりに呆れてしまい、クリフはまた大きなあくびをした。

モニターに映されている基地からは、幾つかの火柱が立ち、数本の閃光が走っている。

基地の中では、アライアンスのMTがバーテックスのMTとヘリに向かってミサイルを発射している。その横では、ACが二機、建物を盾にしながら腕や肩に装備している武器を撃ち合っているが、一向に当たらず、無闇に基地を破壊しているだけだった。

「あのACに乗っているのは2人共、にわかレイヴンってやつか。ここがアリーナだったら、たちまちブーイングの嵐だな…」

小さく、フロートACと初期型ACが戦っている様子も画面端に映されていたが、今のクリフの眼中に無かった。

「こんなグタグタな戦闘じゃあな…、さすがに『天使』様も呆れて出て来ないのか〜?バーテックスもあんなヘタッピよこさず、せめて『G・ファウスト』か『ンジャムジ』ぐれーよこして欲しかったぜ」

そう言うと、シートの横にある物入れからビーフジャーキー入りの袋を取り出すと、再びビーフジャーキーをかじり始めた。

モニター越しからは、基地から何台かのヘリや装甲車が基地を離れていく様子が映し出されていた。

「この感じだと、この勝負アライアンスの負けだな。まあ、しょうがねえか、基地があんなにボロボロなっちまったら、守る意味ももう無いからな。賢明な判断だよ」

相変わらず、基地や森からは、火柱が立ち続けている。

「お〜い、お偉方はもう逃げちまったぜ〜、さっさとアンタらも撤退しろやって、聞こえないか。さて、そろそろ俺もここからおいとましますか」

そう言って操縦桿を握ったときだった。

「!?」

レーダーにクリフから見て、上の方から1つの赤い点が示され、それは段々とクリフの方へ向かってくるようであった。

「まさか?マジで現れやがったのか?」

モニターからも視認出来るぐらい『それ』は近づいてきた。

まるで、雪原に降り積もる雪のように純白な色のACは、猛スピードでディープフォレスト基地に接近してきた。

コアから発動されるオーバードブースト(OB)を使い、周りの木々を震わせながら高速で飛ぶACはあたかも天使が羽を広げ、空を舞っている姿に見えた。

大げさな表現かもしれないが、今のクリフにはそう見えた。

「へへっ、待っていた甲斐はあったぜ♪じっくりとその戦いぶりを見させてもらうぜ。『十字架の天使』さん♪」

ようやく来た「来客」に、クリフの表情は一気に高揚した。

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