ホーム > 小説ギャラリー > 「十字架の天使」 > 第四話「Momentary Battle」
「よし、戦闘領域についた。敵は…?」
ヴィラスはレーダーに目を凝らしながら、モニターを見つめた。
ドウッ
目の前を横切った火球を回避すると、火球が飛んできた方に機体を向けた。
ロックオンサイトの中に一つの赤い点が示された。目の前にある砲台へ照準ロックがされたことを示していた。
ヴィラスはトリガーを引くと、ミカエルソードはそれに連動して、右腕に装備されたレーザーライフルのトリガーを引いた。
銃口から青い光が飛び出したかと思うと、すでにミカエルソードの目の前にあった砲台は、爆発していた。
その炎の向こうからマシンガンを装備したフロート型のACが、こちらに向かってくるのを確認すると、ヴィラスはOBを発動させ、フロートACに急接近した。
フロートACはなんとか近づけさせまいとマシンガンをミカエルソードに向かって発射させたが、それは一発も当たることはなかった。
ミカエルソードは速度を落とさずそのままフロートACの横を通り過ぎていった瞬間、急に向きを変え、無防備になっているACの背中に向かってレーザーライフルを発射した。
バーンと大きな音と同時にACは大きな火球に変わった。
爆発を確認すると、再び向きを変え、ACはブーストをふかし、基地に向かった。途中、損傷した初期型ACが逃げるように戦闘領域から離れていくのを見かけたが、ヴィラスは気に留めなかった。
「なんだ?でけぇ爆発があったけどアイツもう、一機倒したのか!?」
クリフは、爆発の様子を見ながら驚いていた。驚きのあまり、口にくわえていたビーフジャーキーを下に落としてしまっていることにまだ気づいていない。
「やっぱスゲェよ。でも、あんなヘタレはあいつの撃墜スコアの内には入ってねぇのかな?」
そう言いながら機体の頭頂部に備えた大型カメラを作動させた。このカメラは、元々はレイヴンズアークが主催していたACバトル「アリーナ」の会場に設置されていた高性能カメラを、クリフがMTに搭載出来るように改造したのである。
「どんなレイヴンでも戦い方には何かしらの癖はある。じっくりと観察すりゃ、どんなレイヴンかは必ず分かる。さあ、派手に暴れてくれよ」
ヴィラスは基地の前にいたMT2機を左腕に装備されたレーザーブレードで薙ぎ払うと、基地の中へ突入した。
基地の中はほとんど破壊されていて、もう基地としての機能はほぼ皆無といっていいほどだった。
すると、崩壊した建物の陰から重量2脚型ACが飛び出してきた。
右腕に装備されたバズーカから弾がミカエルソードに向かって放たれる。
「……!」
ヴィラスは焦ることなく巧みにブーストペダルを踏み込んだ。
それに応えるようにミカエルソードは踊るような動きでバズーカの弾を回避するとすかさず、レーザーライフルを一射した。
ミカエルソードと敵ACはほぼ一直線上に対峙していたので照準が容易だった。
重量2脚ACは左腕のシールドを構え、なんとかコクピットへの直撃を避けることが出来たが、次の瞬間、重量2脚ACのパイロットの目の前に映ったのは、ブレードを構えるミカエルソードの姿であった。
ブレードから青白い光が伸び、それは重量2脚ACの胴体、コアに向かって飛んできた。
重量2脚ACもブーストを駆使してなんとか左へ避けようとしたが、最後まで避けきれず、右腕を切られてしまった。切られた右腕は、バズーカを持ちながら宙を舞い、地面へ鈍い音を立てながら落下した。
焦ったパイロットは、なんとか体勢を持ち直そうとコアに装備されたイクシードオービット(EO)を発動させながら距離を取ろうとしたが、もう目の前には、ミカエルソードの鋭く光るカメラアイがあった。
重量2脚ACが体勢を崩したほんの一瞬の隙をヴィラスは逃さなかった。一気に重量2脚ACに肉薄して、再度ブレードを発動させ、MOONLIGHT独特の青白い光刃を敵ACのコア目掛けて左腕を振り払った。
その次にはその光刃の青い光と同じ色の光がコクピットの中を支配した。
「これじゃあな…俺には届かないぜ…」
ヴィラスは小さくそう呟くと、モニター越しに映された胴体の真ん中から上が無くなってしまったAC「であったもの」を見つめた。
ゆっくりとAC「であったもの」の下半身が崩れ落ち、小さな爆発が起きた。
「ハ、ハハッ…こりゃマジでたまげた。1機目と合わせて、1分12秒かよ。手負いの機体だからとはいえ、このタイムはスゲェーぞ…化け物かよアイツ…」
クリフはモニターに釘付けになっていた。たった数分であっという間に戦況を変えてしまったレイヴン。それを数百メートル離れたところから見ている。その事実だけで彼は興奮していた。
「あれ程の実力…『アイツ』を思い出す…ジノーヴィー…まさかな」
クリフの脳裏にはかつてのアークのトップに君臨していた男の顔を思い浮かべていた。ふと、「十字架の天使」の正体はあのジノーヴィーではないか?そうクリフは考え始めた。
「でもアイツは確かベイロードシティでの戦闘で戦死したはず…だとしたら『赤い星』?いやアイツも…」
そう呟きながらもこれ以上深く考えるのはやめることにした。自分の性に合わないからだ。
「こんな事、後々じっくりと考えるか…今は、アイツだ。どれどれ…」
ミカエルソードは次のターゲットへの攻撃を開始していた。
建物の陰に隠れていたアライアンスのACは後ろから不意打ちを狙おうとしたがヴィラスの反応のほうが早かった。
素早く機体を反転させるとOBを発動させ敵ACに急接近し、ブレードでコアを斬りつけすかさず、レーザーライフルを放った。
ほぼ零距離で放たれたレーザーはACのコアを貫通すると、後ろにあった燃料タンクに直撃して大爆発を起こし、基地を炎で包み込んだ。
すでに、基地で戦闘をしていた何台かのMTとヘリは、戦闘領域を離脱する素振りを見せていた。
無理も無いかもしれない、ACが2機撃破、それもたった数秒の内に。
この惨劇を目の当たりにした兵士達は一瞬の内に戦意を喪失してしまった。それは、アライアンス、バーテックス関係無かった。
[敵勢力の全滅を確認したわ。お疲れ、ヴィラス]
「終わりか…いや、まだいる…!」
ヴィラスはレーダーの右上に示されていた一つの点を睨んだ。それは、丘の上で戦闘を傍観していたクリフのMTを指していた。
[え、ちょっともういいでしょ!どうせ相手は戦闘を放棄して逃げちゃった奴なんだから、ほっときなさい。て、ヴィラス!ヴィラス!聞いてるの?!あ〜もう!]
オペレータのルシーナは必死でヴィラスに呼びかけたが、ヴィラスからの応答はなかった。
「よーし!バッチリ撮らせてもらったぜ。アンタの正体これからじっくりと調べさせてもらうからな♪」
だがその時、コンソールパネルに「LOCKED」という警告表示が目に入った。
「な、なななな?!やっべー見つかった…」
モニターにはレーザーライフルを構え、こちらに向かってくるミカエルソードの姿。
「こりゃ、非常にヤバいってやつ…」
この時クリフはまた、口にくわえていたビーフジャーキーを落としていた。
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