ARMORED CORE FAN

アーマード・コアファン

ホーム  > 小説ギャラリー > 「十字架の天使」 > 第九話「Angel Striker(後編)」

高速で激しく交差する閃光と銃声そして、4体のAC。銃声とACが地を踏み、ブースターを吹き上げる音が混じり合い、獣の咆哮の様に荒野に響き渡る。



ドウッ、ドウッ

「クッ……!」

「フンッ…!」

ミカエルソードのレーザーライフルから2発のレーザーが発射されるが、ディバインの左肩を僅かに掠めるだけだった。

ディバインは、細かくブースターを噴かしながらミカエルソードの側面に回ると、右腕のプラズマライフルを発射させる。

「……クゥ!」

ヴィラスはすかさずブーストペダルを強く踏み込み、機体を射線からはずす。

真っ赤な太い光の筋はミカエルソードの右肩を掠め、後ろにあった建物を破壊する。ミカエルソードの右肩の追加装甲は高温のプラズマの影響か、微かに熔解している。

「………!」

「避けたか…。フッ、そこらの雑魚よりはいい反応はしているな……」

レイスはブーストペダルを踏んでいた両足にグッと力を入れた。


「だがっ!」


ディバインは素早く後退すると、右肩のミサイルを発射させる。同時にエクステンションのマイクロミサイルも飛び出した。

右肩、そしてエクステンション合わせて10発のミサイルがミカエルソードを飲み込むように襲いかかる。

ミカエルソードは、ブーストを噴かし、ミサイルを避けようとする。同時に、ミカエルソードのコアに搭載されているミサイル迎撃装置が発動する。迎撃装置の銃口から数発のレーザーが発射してミサイルを破壊する。

残りのミサイルもギリギリまで引き付けて、肩のインサイドハッチからミサイルの類似標的デコイを射出し、OBを発動させる。ミサイルはデコイに向かって飛んでいった。

「グッ………!」

一気に180°逆の方向へ高速で飛んで行くのだからその時に掛かるGは途轍もないが、なんとかヴィラスは持ちこたえた。

しかし、次にヴィラスが見たものは、コンソールに表示された「LOCKED」という警告表示とモニターに映されたディバインの姿だった。

「!な…!」

空中で左肩のレーザーキャノンを構えているディバインの姿にヴィラスは目を疑った。本来、2脚型は機体の安定性上、キャノン系の武器は一度、地上で腰を下ろして構えてからでしか撃つことはできない。構えながらのブースト移動や滞空、そこからの発射は機体のバランスを崩してしまうので無理なのである。

(強化人間?!)

例外はある、肉体を改造して、コクピットと神経を特殊なコードで繋ぎ、機体を従来よりも超越した性能を与えることが出来る。そうしたことが出来る人間を強化人間と呼ぶ。

ヴィラスも過去に何度かそうした者たちと戦ったことはあるが、どれもかつてのレイヴンズアークの中でも実力のある者たちであった。そして、ヴィラスと互角の戦いをした。結果は現在のヴィラスが証明している。それが、彼が「十字架の天使」という異名で畏怖されている理由でもあるからだ。

敵ACのパイロットも強化人間だろうとヴィラスは確信していた。


「くたばれ!」

レイスはそう叫ぶとトリガーを引く、ディバインのレーザーキャノンから緑色の閃光が飛び出す。

ヴィラスもとっさに反応して、避けようとするが、ガガッという振動がコクピットを襲う。

《右腕部、損傷》

コクピットの音声メッセージと一緒にモニターの部位損傷アイコンの右腕は黄色く点滅していた。



「へぇ…意外と速いのね…しかも、長時間ブーストを維持することが出来る。あなた、強化人間ね」

「いかにも、でもこれ以上は言う必要はないですね。あなたはここで死ぬのだから…」

AC同士での直接回線での会話をしながら、2機のACは両腕のライフルを撃ち合っている。ライフルからは何十発の弾丸が放たれ、お互いの装甲を削りあっている。

「もし、死ぬとしても一つ聞いてもいい?適当な情報を流したのは私たちを混乱させる為だと思うけど、何故あんな噛ませ犬を送り込んだの?」

「バーテックスに協力的な武装勢力の基地を襲うという適当な情報を流し、バーテックス所属のレイヴンをおびき寄せて叩く、それだけです。まあ、一応、今『十字架の天使』と戦っている新入りの隊員の実力を試すテストを兼ねているのですが……あの連中はどんなレイヴンがくるか観察するための囮ですけど…まさかあなた達が来るとは…」

「知恵が回っているというか、小賢しいというか…」

フィーネは回線を閉じた。これ以上あのパイロットの声を聞くと気分が悪くなりそうなるからだ。

「これ以上は付き合ってられないわ!」

武器をミサイルに切り替え、同時にエクステンションも発動させる。

一斉にミサイルがエターナル・ブルーから発射される。

「ほう……」

アルフは冷静だった。機体をゆっくりと後退させると、彼の機体、アルテミスはミサイルに向けてスナイパーライフルを向けた。

「無駄なことを……」

アルテミスの両腕から一発ずつスナイパーライフルが発射される。

弾丸は先頭のミサイルに当たると、ミサイルは爆発し、後続のミサイルへ誘爆する。残ったミサイルもアルフは冷静に狙撃して破壊してしまった。辺りは爆発で起きた煙で白く包まれる。

(ミサイルを狙撃?まさか、そんな事?!)

突然、エターナル・ブルーのレーダーが作動しなくなる。

「ECM濃度が上がっている!?クッ、視認も出来ないし…」

ガンッ、ガンッ

《脚部、破損》

部位損傷アイコンの脚部が赤く点滅した。

「…!後ろ?やられたわ……」

ようやく回復したレーダーには自機の後ろに赤い点が標されていた。

ガンッ

《頭部、損傷》

「いよいよ、まずくなってきたわね……」



「よく、そんなもので生き延びてきたものだな!」

ディバインからはプラズマライフルとレーザーキャノンが交互に打ち出される。それをミカエルソードはなんとか避けているという感じである。

「クッ」

ミカエルソードもレーザーライフルを発射させるが、右腕を損傷させてしまい、先程よりも射撃精度が落ちている。照準が乱れてしまい、更に、1400と重量があるWH04HL-KRSWが機体の重りとなってしまっている。

ヴィラスはOBを発動させ、ディバインの側面に回り込もうとする。敵の死角に回り込み、そこから近距離戦に持ち込もうと考えた。

しかし、レイスもそれに気づき、OBを発動させ、それを阻む。

「OBの性能はこちらの方が上のようだな」

逆に、ディバインがミカエルソードの側面に回り込む形になった。

「……!」

ヴィラスはエネルギーゲージに目をやった、もう、レッドゾーンに近づいていて、これ以上OBを使えないと判断して、OBを解除した。

ミカエルソードがOBを解除して、立ち止まったところをレイスは見逃さなかった。

「ここまでだ!」

プラズマライフルから赤い光が飛び出す。

「まだだ!」

ミカエルソードは機体を急後退させた。赤い光はミカエルソードのコアをスレスレの所を横切った。しかし、コアのミサイル迎撃装置が吹き飛ばされる。

「これ位の距離なら!」

機体を急転させ、レーザーライフルを放つ、レーザーはディバインの右腕に直撃する。

《右腕部、損傷》

「チッ、やりやがったな!」

「もう一発…て、弾切れか…」

すかさず、ヴィラスは右腕のレーザーライフルの武装解除すると、コアの側面にあるハンガーユニットからハンドガンを取り出す。

「予備武器か!?」

一瞬だが、レイスは動揺した。

「いくぞ!」

ヴィラスはブーストペダルを踏み込み。機体を猛スピードでディバインへ接近させる。

「逃がさねぇ!」

ディバインはレーザーキャノンを発射させる。しかし、ミカエルソードはそれを避ける。

1400もの重量があるWH04HL-KRSWを外し、一気にミカエルソードの機動力が上がっていた。レーザーを回避するとハンドガンを数発発射させる。

弾丸はディバインの装甲を確実に削っていく。

「グッ…!」

レイスは体勢を立て直す為、機体を後退させる。

「!」

「もらった!」

ミカエルソードはOBを発動させ、一気にディバインに急接近してきた。

「うざってぇ!」

ディバインは左腕のレーザーブレードを振り払う。同時にミカエルソードも左腕のレーザーブレードを振り払った。

青白い光刃と深い青の光刃が激突する。

バチィッ!!

レーザー同士が激突して激しいスパークが発生する。

「クッ」

「チッ」

接近戦で決着をつける。お互い、同じ考えであった。



「さて、次はコクピットです」

「右腕も壊され、脚部もまともに動かない。もう、ここまでかしら…」

エターナル・ブルーの右腕は肘から下は完全に無くなってしまい、機体の各部分から火花が出ている。それとは対照的にアルテミスは僅かに左腕を損傷させただけであった。

「結構、手こずらせてくれましたが、それもここまでです」

そう言って、トリガーを引こうとしたときだった。

[北西に、熱源反応あり!]

フィーネのスピーカからルシーナの声が聞こえた。

「……敵?味方?ルシーナ、判る?」

「…敵ですか?」

それは、ブレードの応酬をしていたヴィラスとレイスも気づいた。

「?!」

「何だ?」

[これは…ヴィラス、アクエリアス、味方よ!]

ルシーナは歓喜の声を上げていた。

北西の方角から1機の重量2脚型ACが5機のMTを引き連れて施設に向かってくる。

深緑色に塗装された重量2脚ACは、OBを発動させると、一気にフィーネとアルフのいる方へ向かっていった。

深緑色のACは、アルテミスへ右腕のショットガンを放ちながら、左腕のマシンガンを当てていく。

「邪魔が…入りましたね」

アルフは機体を後退させながら、標的を深緑色のACに変える。

その時だった。

[南西に熱源反応!機種は…ACが2機!]

「…!また?!」

[これは……、フォックスアイとエイミングホーク!あの二人よ!]

「!」

「!」

ヴィラスとレイスは同時に南西の方へ機体を向けた。そこには白い重量2脚型ACと茶色の軽量2脚型ACの姿があった。

「ほう…、派手な銃声が聞こえてくるもんだから来てみたら凄いことになっているようだな……」

戦場にいた全ACのコクピットのスピーカから男の声が聞こえた。声の主は、現在バーテックスのリーダーであるジャック・Oのものであった。

今は突然の乱入者で戦場は沈黙状態だが、フォックスアイ、エイミングホーク共に、武器を構え、臨戦態勢は整っている。

いつ、この沈黙が破られてもおかしくはない、張り詰めた空気が、戦場を包み込んでいる。


「これ以上、此処にいるのは無意味のようですね……、レイス、ここは退きましょう」

「…何」

「退却します。これは命令です」

「チッ……」

レイスとアルフは機体を反転させると、猛スピードで戦闘領域を離脱していった。


深緑色のACはゆっくりとフォックスアイに銃口を向けた。増援のMTもそれにあわせて、ライフルの銃口を向ける。

「心配するな。お前達への攻撃の意志はない。ただ、見物をしにきただけだ…」

ジャックは機体をミカエルソードのほうへ向ける。

「貴様が『十字架の天使』か…こうして会うのは初めてだな」

「あんたが、バーテックスのリーダー、ジャック・O…」

「貴様の戦い、少し見させてもらったよ、中途半端な弱者よりはマシだったな…」

その後、ゆっくりと機体を反転させ、フォックスアイは、ブースターを噴かした。

「貴様と戦える事…いや、共に戦える事を期待しているよ『十字架の天使』」

そう言うと、フォックスアイのブースターの炎が一気に吹き上がり、この場から飛び去ってしまった。エイミングホークもそれに続き、飛び去っていった。

[と、とりあえず終わったようね……すぐに迎えの輸送機の手配をするから待ってて]

「大丈夫だ、必要ない。もうすぐ、こちらが手配した輸送機が到着する筈だ」

深緑色のACから太く、低い男の声が聞こえた。

「礼を言うわ。ありがとう、トレッド」

トレッドと呼ばれた男のスピーカからフィーネの声が聞こえた。

「お前達が生きててくればそれでいい」

「嬉しいこと言ってくれるわ」

[これで、ホントに終わりね、ヴィラス、お疲れ様]

「…………」

[どうしたの?]

「…いや…」

数分後、2台の輸送機が到着した。3機のACは輸送機の中へ搬送され、シーズ基地へ向かって飛び去った。


高速で荒野を疾走する2機のAC。フォックスアイとエイミングホークである。

「何故、あそこで奴を倒しておかなかったのだ?」

エイミングホークのパイロット鳥大老はジャックに疑問を投げつけた。

「彼らはまだ、死んではならない。彼らには彼らの戦いがある…」

「…………」

「もうすぐだ、もうすぐ機が熟する。これから始まるのだ、我々の本当の戦いも……、頼むぞ、鳥大老」

「……そうだな、始まるのだな…いよいよ」


宵闇が荒野を静かに包み、東からは月が昇る。これから何かが起きることを伝えるかのようにこの日の月は薄赤く染まっていた。

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