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ホーム  > 小説ギャラリー > 「十字架の天使」 > 第十五話「Pain」

全身を包み込むように襲ってくる痛みと痺れ。

レイスはその痛みで目が覚めた。

オクティアル基地の医務室のベットでレイスは横になっていた。

輸送機に乗り込んだ時に意識が遠退いていったのをボンヤリと記憶しているが、どうやらそのまま気を失い、ここに運ばれてきたらしい。

ゆっくりと首を右腕の方に向けると、右腕には点滴が付けられている。

「気付いたようね」

不意に左から女性の声がした。声の主はシンシアだった。

「……お前か……っ…!」

レイスは体を起こそうとするが、同時に激しい頭痛とめまいで体が倒れてしまう。

「あなたの処分は決まったわ。一週間の独房入り。あれだけの事をやっておいて、この処分は結構軽いものだと思うけど」

「…ディバインは……?」

「ガレージに置いてあるわ。ひどくやられたわね…、修理にはかなりの時間が掛かると思うわ」

「…………」

「なぜ、あんなマネを?」

「……分からない……だが、あの白いACとはいずれ決着をつけなければいけない。俺自身で…」

「白いAC…チラッとしか見えなかったけど、『十字架の天使』とよばれているレイヴンの機体よね」

「そんな名前で呼ばれているのか…アイツは…」

「知り合いなの?」

「お前にはどうでもいい事だ…」

「…………そうね。じゃ、しっかり養生しなさい」

シンシアはそう言って椅子から立ち上がったが、レイスは彼女の右腕を掴んだ。

「何?」

「一つ聞き忘れた。あの2機はどうなった?」

「蒼天がその2機の追撃を行っているようだけど、2機とも逃げ切れたらしいわね」

「…そうか…」

「聞きたいのはそれだけ?」

「…ああ」

「じゃ、おやすみ」


シンシアは医務室から出るとそこにはアルフの姿があった。

「彼の様子はどうですか?」

「全身にダメージがあるけど問題は無さそうです」

「そうですか、それは良かった」

アルフは安堵を浮かべた表情をしていた。

「…………」

シンシアはその表情を見る度に何か嫌悪感を感じていた。戦場ではゾッとするような表情を浮かべながらトリガーを引くアルフの姿は何処にもなく、どこにでもいるごく普通の好青年の表情をしたアルフだった。しかし、その表情にも何処か不気味さがあった。

「中佐。先程の戦闘では『蒼天』が介入してきたのですが、あれは一体…?」

「別に問題は無さそうですが」

「彼らは本部の命令でしか動けないはずです。しかし、このことを事前に知っていたかのような動きは…」

「彼らは遊撃部隊です。行動範囲もとても広い。恐らく、この付近の戦闘で偶然居合わせたのでしょう」

「偶然…ですか…?」

「そう、偶然」

アルフは笑みを浮かべながらそう答えた。

そして、そのまま立ち去っていくアルフを、シンシアは黙って見送っていくしかなかった。



レイスは天井を見つめていた。

体の痛みと痺れは少し治まってきているが、自由に体を動かせない状態に苛立ちながらも何処からか感じる安心感にゆっくりと一息ついた。

(少しばかり無理しすぎたか……)

かろうじて動くことが出来る左腕を上げ、じっくりと左腕を見る。

先の戦闘で受けた傷なのだろう、各所には包帯が巻かれていて痛々しい。

「…………」

手の甲には「00103」と書かれた入れ墨が掘ってある。

(「コイツ」と引き替えに俺はミラージュの兵士になった…「D-Plus」…コイツの力を使っても結局、奴を仕留められなかった…)

レイスの脳裏に先程の戦闘のビジョンが蘇ってくる。

ミラージュの理想の為に戦うことを引き替えに手に入れた力。二度と人間らしい生活を出来なくなってしまう事を覚悟して身につけた力を以てしてもあの白いACは倒す事が出来なかった。しかも、途中から乱入してきた紅いACには攻撃も出来ずにやられてしまった。

(シンシアが来るのがもう少し遅かったら、確実に殺られていた…)

レイスはギュッと自分の体を抱きしめるように右腕を掴んだ。

レイスは今、自分自身が生きていることに感謝していた。それは、彼にとって初めての事だった。

(足掻いてやる……)

掴んでいる右腕には痛烈な痛みが走っていたが、この痛みも今のレイスには心地よいものになっていた。

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