化学エネルギーのこと。Chemical Energy.[英]
化学と言うと毒ガスや酸などをイメージしがちだが、ここでは弾頭に内蔵された炸薬の爆発(=化学反応)のことを指す。
現実では、いわゆる通常の榴弾(HE)、成形炸薬弾(HEAT)、自己鍛造弾(SFF)など、『発射時のエネルギーに依存せず、内蔵された炸薬の反応で主に攻撃力を生み出す弾頭』がこれに分類される。
ACVにて、過去作で実体弾に分類されていた一部武器から抽出される形で独立、新属性として導入された。
バトルライフル、HEATキャノン、HEATパイル、HEAT弾頭型ミサイルなど、成形炸薬弾頭を使用する武器がこれに分類されている。
徹甲弾などと比較して弾頭の構造が複雑であるため、ACVの世界では大量生産が難しい旨が『the FACT』に記述されているが、実際のACVプレイヤー間ではむしろ下手なKE属性武器よりも普及率が高い。
炸薬のエネルギーのみで攻撃力を生み出す都合、距離減衰がほとんど発生しないのが最大の利点。
またこの特性に関連し、弾速を犠牲にした代わり、高威力弾を短リロードで連射可能にした火力特化型のCE武器も多数存在している。
反面、全体的に大口径で弾頭が重いためか、弾速はKE属性武器と比較すると見劣りするものが多い。
ある程度まで弾速を高めた機種もあるが、代わりにリロードが落ちている場合がほとんどである。
なお、HEATと言う名称はあくまで“High Explosive Anti Tank(=対戦車榴弾)”のアクロニムである。
熱で装甲を溶かしているわけではないし、ましてやナパームミサイルなどとは別物であることは後述の通り。
また、原理を考えれば貫通力不足による跳弾は発生しないはずであるが、ゲーム中ではKE弾同様に景気良く弾かれる。
一応、弾頭の先端が逸れて肩から着弾してしまったり、信管が不発だったりすれば跳弾する可能性もある
さらに付記すると、装甲貫通のために使われるエネルギーは炸薬全体の20〜30%ほどであり、残りの70〜80%は通常の榴弾と同様、破片と爆風という形で全周囲に放出される。
炸薬量や弾殻設計の都合などから、純粋な榴弾と比較すると効果は見劣りするとされるが、対装甲のみならず面制圧も兼用可能な砲弾である。
実際、近接信管を搭載し、対ヘリ戦まで対応可能なHEAT弾も1994年に米軍で実用化されている。
爆発するKE属性? †
上述の通り、現実の分類では榴弾(HE)もCE弾に分類されるのだが、ACVではロケット、ハウザーなどの爆風ダメージはKE属性に分類されている。
これは現実の分類は「弾頭の“動作”原理から」、ACVの分類は「弾頭の“攻撃”原理から」考えられているためだと筆者は考える。
両者は確かに「弾頭に内蔵した炸薬で攻撃する」という動作原理では同様のCE弾だが、装甲への攻撃原理は大きく異なるからである。
成形炸薬弾(HEAT)は、大雑把に表現すれば『炸薬のエネルギーを一点に集中し、超小型・超高速・極短射程の徹甲弾を撃ち出す、砲弾サイズの大砲』である。
成形炸薬によって撃ち出されるメタルジェット(液状化金属)は、マッハ20以上の速度で目標に衝突する。
この莫大な運動エネルギーにより『塑性流動』と呼ばれる現象が起こり、装甲の機械的強度を無視して貫通してしまうのが成形炸薬弾の特徴である。
つまり、侵徹自体はメタルジェットの圧力=運動エネルギーで行われている。熱で装甲を溶かしているわけではない
一方でメタルジェットが侵徹力を発揮する距離は砲弾直径の数倍の距離までに限られ、これ以上の距離では侵徹力を失う。そのためHEAT弾の防御方法として「メタルジェットの射程より外側でHEAT弾を炸裂させる」、または「HEAT砲弾の信管が起爆しないように受け止める」というものがあり、主装甲から数十センチほど離れた位置に金網が張り巡らされる。
これに対し、榴弾(HE)は炸薬の反応により、弾殻の破片や燃焼ガスの衝撃波(=爆風)を撒き散らして攻撃する弾頭である
破片の速度は物にも寄るがせいぜいマッハ3〜4程度であり、形状も不均一であるため十分な塑性流動は起こらない。
このため、やや古い徹甲弾(AP)=KE弾と装甲を侵徹する原理は大差ない。
というわけで、ACV中の分類において爆風ダメージがKE属性に分類されているのは、十分辻褄が合っていると考えられる。